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マレーシアの3つの金型集積地

 では、マレーシアに全く金型産業が育っていないかというと、そんなことはない。先の通り、マレーシアには金型企業の集積地がいくつか存在しており、それらは図5に示すように大きくは3カ所に集結している。

図5●マレーシアの基盤産業の集結地
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 第1に、クアラルンプール周辺のセランゴール地域である。前述のように、家電製品を中心とした電機産業向け金型製造を行っている。

 第2に、北部に存在し、観光地としても有名なペナン島周辺のペナン地域である。このペナン地域は半導体産業を中心とした超精密部品製造が行われており、セランゴール地域における家電用プラスチック金型製造とは違い、半導体用リードフレーム金型やコネクターなどの端子用金型といった、最先端の精密プレス金型製造企業が集結している地域である。

 筆者は、ペナン地域は世界で超精密プレス金型関連企業が最も集結している地域と考えている。そのため、セランゴール地域とは違って、組立産業の海外流出による産業の空洞化の影響はほとんど受けず、むしろマレーシアの人件費の安さを利用して輸出の拡大が積極的に行われており、生産量が拡大しつつある。筆者は以前勤めていた企業で精密平面研削盤の販売を手掛けていたが、このペナン地域への販売は、職人しか使えないような超精密平面研削盤が中心だった。

 そして第3に、マレーシアの最南端に位置するジョホールバール地域だ。この地域の金型産業は、前述の2つの地域とは性格を異にする。現在のジョホールバール地域はマレーシアというより、むしろシンガポールの一地域と考えた方が分かりやすい。つまりこの地域の金型産業の中心はシンガポール金型産業の「製造工場」なのである。

 シンガポール企業の営業活動は世界でも類を見ないほど優秀で強力である。加えて3D-CADなどを使いこなす優秀な設計技術者も数多く存在する。そのため、同地域は前述の2つの地域とは違った意味で、今でも活況を呈している。この地域については次々号(2015年2月号)で紹介する予定のシンガポール編で記述することにしたい。

 以上のように、マレーシアの金型産業を1つの金型産業として捉えることはできない。筆者は時々「マレーシアの金型産業の景況と今後は?」「マレーシアの金型技術は日本と比べてどの程度か」などと聞かれることがあるが、マレーシアの金型産業は一言では説明できない国であるとしか答えられない。