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 セイコーエプソンは2014年6月、両眼光学シースルー型のスマートグラス「MOVERIO BT-200」を発売した(図1)。2011年に発売した初代機の「BT-100」と比較して、重さが約1/3となる88gに軽量化した。

図1 BT\-200の外観と主要な仕様
図1 BT-200の外観と主要な仕様
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 BT-200は映像を投写するヘッドセット部と、映像を生成したり、アプリケーションを実行したりするコントローラー部から成る。本稿では、このヘッドセット部の特に光学設計について説明する。

 BT-200の開発に当たっては、セイコーエプソンがプロジェクターで培ってきた光学設計技術と、超小型・高精細を実現する高温多結晶Si(HTPS:high temperature poly-silicon)TFT液晶パネル技術、およびプロジェクターやインクジェットプリンターなどで蓄積してきた完成品製造技術が生かされている。

ARメガネに最適

 BT-200では、ヘッドセット部の左右側頭部、いわゆるメガネのつるに当たる部分に超小型プロジェクターを搭載している(図2)。LEDバックライトから出射した光は、HTPSパネルにてフルカラー映像に変調され、その映像光はプロジェクションレンズに入射する。プロジェクションレンズ部と自由曲面導光板は所望の解像度、画角(画面サイズ)になるように一体で設計しており、その内部で透過・反射を繰り返すことにより、映像光が作り出される。目の前にあるハーフミラー部によってHTPSパネルからの映像光を目に導くと同時に、外界の風景像も入射するので、実視野に映像イメージを重ね合わせる拡張現実感(AR:Augmented Reality)の提示を可能としている。

図2 BT\-200の導光板の光学系
図2 BT-200の導光板の光学系
自由曲面を3カ所使い、液晶パネルからの出射光束を細く保つようにすることで小型化・薄型化を実現している。
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 BT-200では次のような光学要求仕様に沿って設計した。(1)映像光のひずみや解像劣化のない光学設計、(2)人の顔の形状にフィットした光学レイアウト、(3)射出成形による導光板の製造、である。

 (1)は光学機器としては必須項目である。(2)の顔の形状にフィットするレイアウトとは、できる限り普通のメガネやサングラスの外形を維持しつつ、光学系をレイアウトし、製品のデザイン性、装着性を確保することである。(3)は低コスト化のために必須の項目である。これらを総合的に検討した結果、図2のような配置が最善と考えた。ただし、設計・製造においては大変な困難を伴った。(2)や(3)の制約を持ちながら(1)の所望の光学性能を満足させるために、プロジェクションレンズと導光板部分に自由曲面を多用する必要があったためだ。