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自由曲面の設計に苦労

 光学製品の代表例はカメラ用のレンズだが、この場合、中心軸対称の球面・非球面レンズが用いられることが多い。設計性能は多数のレンズを中心軸に合わせた形で並べることで確保している(図3)。一方、BT-200はメガネ型機器ということで小型・軽量化が必須であり、できる限りレンズ枚数を削減しなければならない。そこで導光板部分の入射側近傍(筐体内に隠れる部分)の2カ所とハーフミラー面(接合後に封止される部分)の1カ所、合計3カ所に自由曲面を採用することで、可能な限りレンズ枚数を減らした。導光板全体に光学的な特性を与える設計もあるが、そうした手法は採らなかった。BT-200では透明な導光板越しに外界の風景を見ている。その部分に曲面形状を使うとレンズ効果により外の景色がひずんだりして、違和感を覚えてしまうためだ。

図3 球面・非球面形状と自由曲面形状の特徴と設計・製造の難易度
図3 球面・非球面形状と自由曲面形状の特徴と設計・製造の難易度
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 自由曲面の設計が大変なのは、光線を3次元的に考慮しなければならないため、扱うパラメーター数が膨大になるからである。自由曲面での反射を計算するために最適なアルゴリズムを構築しなければ、シミュレーションに膨大な工数と労力が発生する恐れがある。最悪の場合、計算が発散してしまい、所望の最適解にたどり着けない可能性もある。そこで今回、汎用性の高い自由曲面の設計技術を自社で開発した。具体的には、市販の光学設計ソフトにも対応できる独自のアルゴリズムをライブラリーとして作り上げた。

社内の製造技術を結集

 製造では、自由曲面を複数含む複雑な形状の導光板を高い精度で大量生産するのに苦労した。導光板には、プロジェクターから入射した光が内部で反射を繰り返し、最終的に透過させる役割がある。ほんのわずかな反りや、凹凸があるだけで、映像にひずみや解像劣化を引き起こしてしまう。製造には非常に高い面精度、平面度が要求される。

 導光板の厚さは約10mm程度あり、従来の肉厚射出成形の精度では十分な光学性能を確保できなかった。射出後の研磨加工などで精度を確保することはできるが、サイクルタイムの長い工程となってしまい、量産コストに見合わない。低コスト導光板成形を実現するため、材料選定から金型製造、加工、成形まで、社内の関係部門を横断し、開発に取り組んだ。金型製造については社内のプリンター、プロジェクターの精密部品加工チームと従来の加工技術を活用し、それをどのように自由曲面に適用するかを議論した。加工方法、成形条件、サイクルタイムなど試行錯誤を重ね、要求精度を満足する低コスト導光板の成形を実現可能とした。