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 既存のシステムを観察すると、「このシステムは、この装置と、このサービスと、この人たちで成り立っているんだ」というように、システムの構成要素を把握することができる。では、これから作る新しいシステムは、どのように構成要素を決めればよいのか。また、派生開発を繰り返した既存システムを再構築したい場合はどうか。今回は、システムの構成要素をどのように決めるか、システムの動的な側面をどのように定義すればよいかといった、システムアーキテクチャーの構築方法について解説する。

システムアーキテクチャーとは

 システムは、複数の要素と要素間の関係で構成され、全体としてある機能を果たす有機的なものとして定義できる。例えば、図1のETCシステムでは、クルマの高速道路利用を検知するためのETC車載器を搭載した「ETC設置車」と「路側アンテナ」という要素がある。また、クルマと所有者を特定するための「ETCカード」と、ETCカードを利用できる状態にセットアップし、暗号化した「鍵情報」という要素がある。さらに、クルマごとに通行料金を算出する「料金計算コンピューター」、料金を支払う「クレジットカード会社」といった要素もある。このように、さまざまな構成要素で成り立っている。

図1 ETCシステム
図1 ETCシステム
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 システム構成要素の中には、単なる構成要素という位置付けのものと、要素自体の運用と管理が独立しているものがある。ETCシステムの例の場合、単なる構成要素は、「ETC車載器」と「路側アンテナ」が該当する。ETC車載器は単独では機能せず、路側アンテナがあって初めて機能する。要素自体の運用と管理が独立した構成要素を持つシステムは、「システム・オブ・システムズ(System of Systems)」と呼ばれる。ETCシステムの例では、「クレジットカード」や「料金計算コンピューター」などは構成要素単体で独立して運用、管理することができる。

 このように、システムは大小さまざまな要素で成り立っている。そして、この「要素」と「要素間の関係」を定義したものが「構造的な(静的な)側面のアーキテクチャー」である。一方、「要素の振る舞い」や「要素間の相互作用」を定義したものが「動的な側面のアーキテクチャー」である。すなわち、静的な「空間軸」と動的な「時間軸」のそれぞれの観点で、利害関係者の要求や制約を満たすアーキテクチャーを構築することが求められる。

 INCOSEのシステムズエンジニアリング・ハンドブック1)では、「システムは、1つ以上の定められた目的を達成するために編成された、相互作用する要素の組み合わせである」と定義されている。システムアーキテクチャーの構築では、要素の定義と相互作用としての振る舞いを定義する必要がある。

INCOSE=システムズエンジニアリングを推進する団体。正式名称はInternational Council on Systems Engineering。

 システムアーキテクチャーの構築は、これまでにない新しい価値の創造である。作り手にとってチャレンジングであり、クリエーティブな活動である。システムの利害関係者からの要求を満足し、システムの置かれる環境にふさわしいアーキテクチャーを構築するには、アイデアやコンセプトを膨らませ、それを具体的な形に落とし込む活動が重要になる。