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お菓子入れに付けたmononomeは、子供がお菓子を取り過ぎると怒る。
お菓子入れに付けたmononomeは、子供がお菓子を取り過ぎると怒る。
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 今号の特集記事を読んでいてドキリとしました。「ヘルスモニタリング」という言葉遣いに行き当たったからです。インフラ電装化の記事で、なぜ人の話が出てくるのか。そう思ったら、建物の健康診断という意味でした。英語圏では自然に聞こえる表現なのかもしれませんが、人工物を擬人化する言いように違和感が残ります。

 筆者が考えを180度変えたのは、新規事業開発プランナーの加賀谷友典氏と話してからです。これからはむしろ、モノを人に見立てる方が適切になるのではないか。

 ユーザーの脳波に応じて「ネコ耳」が動くヘッドセット「necomimi」を開発した同氏が現在手がけるのは、「mononome(モノノメ)」。紹介サイト曰く、「IoTにエンターテインメント性や感情の要素を加えた世界初の『EYEoT(Eye of Things)』システム」です。さまざまなモノに付けるだけで、ディスプレーに映しだされた目が、「モノの気持ち」に応じてくるくると表情を変えます。内蔵するセンサーでモノの動きを検知する仕組みで、子供に飛び乗られたソファが目をパチクリさせたり、しばらく使われていない掃除機が寂しそうな目で掃除を促したりします。

 人とモノの間にこうした対話を確立する利点は、通信効率の高さです。モノの状態を人に伝える際に、機械の内部状態やセンサーで検知した生データをそのまま表示しても分からないのは自明の理。例えば故障時には、ランプの点滅や言葉に変えて伝える手段はありますが、あまりスマートとは言えません。煩わせずに人の注意を引くには、感情に訴えるのが一番です。橋やトンネルが、苦しそうな表情を見せたら、管理者は黙っていられません。目は口ほどに、いえそれ以上にモノを言うのです。いずれ人々は、「哀 of Things」や「快 of Things」で、モノの機嫌を判断するようになるでしょう。そのうち「Lie of Things」をつく、不届きモノも現れるかもしれません。

 もう1つの利点があります。センサーネットワークによるインフラ監視の普及を阻む、コスト負担の問題を解決できる可能性があることです。人がモノの表情を読めるようになれば、自ら進んでお金を払うようになるはずです。もうお分かりでしょう。そう、モノとの間に日々育んだ「愛 of Things」に応えるために。