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 パワー半導体業界に“第4の波”が訪れている。最初の波はSiのサイリスタが登場した1960年代。サイリスタの登場で「Siの半導体素子で電力を制御する“パワーエレクトロニクス”という分野が生まれた」(あるパワー半導体技術者)。次の波は、バイポーラトランジスタやGTOが登場した1970年代。続いて1980年代には、IGBTがパワー半導体やパワーエレクトロニクス(パワエレ)を大きく変えた。

 今後は、電力変換器の大幅な損失低減や大幅な小型化を可能にする、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)といった新材料のパワー半導体素子(パワー素子)が、パワエレ業界を大きく変える。2014年はその萌芽が見えた。SiCパワー素子はその適用範囲がグンと広がり、GaNパワー素子は実用化が始まった

SiCがついにクルマに

 その象徴が、自動車業界がSiCパワー素子の採用に動き出したことである(図1)。これまで、ハイブリッド車や電気自動車といった電動車両の車載充電器に一部、採用されてきた。今後は、車体を動かす駆動システムにまでSiCが広がる。

図1 SiCがクルマに載る
図1 SiCがクルマに載る
自動車業界がSiCの採用に動き出した。例えばホンダは、2015年度中に発売予定の燃料電池車にSiCパワー素子を採用するもよう(a)。トヨタ自動車は、広瀬工場にSiC向けクリーンルームを構築(b)。デンソーは、トレンチ型のMOSFETの量産を2015年内に始める予定だ(c)。明電舎や日本電産はそれぞれ、SiCパワー素子を利用した駆動回路一体化型の車載モーターを開発中だ(d、e)。(写真:(b)と(e)は各社)
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 例えばホンダは、燃料電池のセルスタックの出力電圧を昇圧する部分に、SiCパワー素子を適用した燃料電池車のコンセプトモデルを発表した。2015年度中の実用化を目指す。

 業界最大手のトヨタ自動車もSiCの採用に向けて布石を打つ。同社は2014年5月、SiCパワー素子を使った試作車で公道実験を2015年5月までに始める計画を明らかにした。SiCパワー素子の内製を視野に、2013年12月には広瀬工場内にSiC向けのクリーンルームを整備。「2020年までにSiC適用車両を量産したい」(トヨタ)と意気込む。

 自動車メーカーがSiC採用に前向きな姿勢を見せる中、電装品メーカーもSiC採用の車載部品の開発に力を入れる。例えばデンソーは、SiC MOSFETのサンプル出荷を開始し、2015年内に量産を始める計画だ。

 SiCパワー素子を利用した駆動回路を一体化した車載モーターの開発も進む。例えば明電舎や日本電産がそれぞれ開発中。いずれも2020年ごろの自動車搭載を目標にしている。