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1.6kmの加速器を6mに

 自動車やパワコン、鉄道といった分野でのSiC採用は、既存のSi素子を置き換えるかたちだが、SiCだからこそ実現できるようになった応用も出てきた。その好例が、福島SiC応用技研や京都ニュートロニクス、ロームらが開発した、線形加速器などに用いる高電圧パルス発生器である(図4)。高電圧パルス発生器は、電源装置から出力される高電圧の直流を入力し、SiC MOSFETでチョッピングして高電圧パルスを出力するもの。

図4 1\.6kmの加速器をわずか6mに
図4 1.6kmの加速器をわずか6mに
SiCパワー素子だからこそ実現できる応用事例も出てきた。例えば、福島SiC応用技研などのグループは、ロームのSiCパワー素子を利用して、線形加速器の長さを6mにまで短くできる高電圧パルス発生器を開発した。従来は真空管を利用しており、1.6kmと長かった。
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 クライストロン真空管を利用した一般的な線形加速器に比べて、SiCパワー素子の適用で長さを大幅に短くできる。例えば、1.6kmから6mにまで短くできるという。加速器の寸法を短くできるのは、SiCパワー素子の加速電流が大きく、同じエネルギーの中性子ビームを得るのに必要な加速電圧が低くて済むからである。

 福島SiC応用技研によれば、既に第1号機を2014年11月に納入。第2号機や第3号機の開発に着手しているという。

アジア企業もSiC

 自動車にまでSiCパワー素子が広がったのは、同素子を利用する環境が急速に整ってきたためである(図5)。まず、SiCパワー素子を手掛ける企業の数が増えた。ダイオード製品であれば10社近く、トランジスタ製品であれば5社近くある。SiCパワーモジュールも10社ほどが提供する。

図5 SiCパワー素子や6インチ基板を手掛ける企業が増える
図5 SiCパワー素子や6インチ基板を手掛ける企業が増える
SiCパワー素子を手掛ける企業が増えている。ダイオード製品を手掛ける企業は10社近く、トランジスタを手掛ける企業は5社近くにのぼる。モジュール品を販売する企業も10社ほどと多い。2015年には、トレンチ型のSiC MOSFETの量産が始まる。SiC基板に関しては、口径が150mm(6インチ)と大きいSiC基板を販売する企業も複数社ある。
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 これまで米国や欧州、日本のメーカーだけだったが、最近では日本以外のアジア地域の企業も、SiCパワー素子製品を手掛け始めた。例えば、台湾DACO Semiconductor社は、SiCダイオード製品の量産を始めた。

 SiCパワー素子の種類も増える。2015年には、トレンチ型のSiC MOSFETがいよいよ製品化される。ロームは耐圧1200Vと650V品を、デンソーは650V品の量産を始める予定だ。トレンチ型MOSFETは、現在製品化されているプレーナー型のSiC MOSFETに比べて、オン抵抗を数分の1にまで小さくできる。それだけに、SiCの材料ポテンシャルを引き出す「本命の素子」とされている。