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MOST(Media Oriented Systems Transport)とは、大容量のマルチメディアデータを高速伝送できる車載ネットワークの規格である。その最新規格をドイツDaimler社が「メルセデス・ベンツSクラス」(図1)に搭載するなど、欧州を中心に採用が加速している。(本誌)

図1 「メルセデス•ベンツSクラス」
MOSTの第3世代規格「MOST150」に準拠したインフォテインメントシステムを採用している。
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 車載ネットワークは、用途によって大きく二つに分かれる。一つは走行や車体に関係する「制御系」で、もう一つはカーナビゲーションシステムやAV(オーディオ・ビデオ)機器などをつなぐ「情報系」である。このうち制御系では「CAN」(Controller Area Network)という規格が主流であり、CANよりも低速だがコストが安い「LIN」(Local Interconnect Network)という規格も使われている。

 一方、情報系では、車載インフォテインメント機器同士を接続するため、欧州の自動車メーカーを中心に「MOST」の採用が進んでいる。ドイツのAudi社やBMW社、Daimler社といった自動車メーカーの他に、世界の部品メーカーや電装品メーカーなどで組織する団体「MOST Cooperation」が、規格の作成を担当している。

表 MOSTの特徴
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 現在、MOSTの規格は三つある。MOST Cooperationが最初に作成したのは、25Mb/s(ビット/秒)の伝送速度を持つ「MOST25」である。同規格の伝送速度を2倍に高めたのが、第2世代の「MOST50」。伝送速度がMOST50よりも3倍速いのが、2007年に作成された第3世代の「MOST150」である(表)。伝送速度が150Mb/sと高速になっただけでなく、アイソクロナス伝送や「IEEE802.3」準拠のEthernetとの連携など、多くの機能を備えている。

 アイソクロナス伝送とは、ネットワークの負荷が高い状態でも特定の非同期通信に対して一定の伝送容量を確保できる方式のこと。音声や動画など再生時に途切れては困るデータの伝送に適している。またIEEE802.3準拠のEthernetと連携しているため、インターネット上のデータ(TCP/IPなどのデータ)を、変換することなくやり取りできるメリットもある。

 MOSTは既に、150車種以上のクルマに採用されている。最新規格のMOST150についてはDaimler社の他に、Audi社も「A3」に採用している。以下、Daimler社の事例を同社の寄稿で紹介する。