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米Google社とメガサプライヤーの攻勢にさらされるのが完成車メーカーだ。ピラミッドの頂点の地位を維持するため、世界大手を中心に対抗する。まずはグーグルカーを上回る技術を目指す。さらに国を巻き込み、グーグルカーの普及を遅らせる。その先頭を走るのが日本だ。

 ドイツDaimler社が2015年1月にエレクトロニクス関連の展示会「2015 Internatinal CES」で発表したコンセプトカーは、衝撃的だった(図1)。グーグルカーの開発が明らかになって以降、大手完成車メーカーとして初めて、完全自動運転車の普及を想定する姿勢を示したからだ。

図1 Daimler社のコンセプトカー
(a)前席の2座を回転させて後ろに向け、後席の2座と向かい合わせて座れる。ユーザーが自ら運転したいときは、前席を前向きに回転させることでステアリングを操作できる。(b)全長5220×全幅2018× 全高1524mm、ホイールベースは3610mm。車両の左右に観音開きのドアを備え、Bピラーはない。燃料電池車。
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図2 Dieter Zetsche氏
Daimler 社Chairman of the Board of Management。自動運転車は「ユーザーに自由な空間を提供できる」と語った。

 Daimler社がCESで披露したのは、Mercedes-Benzブランドの「F015 Luxury in Motion」。自動運転中に前席の2座を回転させて後ろに向け、後席の2座と向かい合わせて座れる。乗員が、走行中に周囲の安全を確かめる責任を負わない完全自動運転車だ。同社Chairman of the Board of Management(会長)のDieter Zetsche氏は、「これが自動運転車の最終形。クルマは動く居住空間になる」と、高らかに宣言した(図2)。

 これまで完成車メーカーは、自動運転が「安全に貢献する技術」(トヨタ自動車専務役員の吉田守孝氏)であることを前面に打ち出し、利便性の高さをほとんど主張してこなかった。完成車メーカーにとっての自動運転とは、運転者を補助する「半自動運転」が基本で、「駆け抜ける歓びを提供する」(BMW社Research and Technology, Head of Driver Assistance and PerceptionのWerner Huber氏)というのは譲れない共通認識だった(別掲記事参照)。

 「走る楽しみ」を実現する車両の開発にしのぎを削ってきた長い歴史がある上、それがなければ高いカネを支払う消費者が減るという思いもあるだろう。「自動運転」の意味するところが、グーグルカーのように「運転する必要がなく、無人で走る便利なもの」との認識が世界に広がると、自らの首を絞めることにつながりかねない。