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 敵に塩を送ってもいい─。世界最大の自動車メーカーが思い切った戦略を打ち出した。2015年1月5日、トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)の普及に向けて、関連する約5680件の特許の実施権を無償で提供すると発表した。

  「2015~2020年に発売される第1世代のFCVは非常に重要だ。(成功させるには)自動車メーカー各社、政府、研究機関、エネルギー事業者の協力が欠かせない」。会見でToyota Motor Sales, USA社のSenior Vice PresidentであるRobert Carter氏はこう強調した(図1)。

図1 トヨタ自動車はFCV関連特許の実施権の無償提供を発表
米国際家電見本市「2015 International CES」の会場で特許開放の狙いを語るToyota Motor Sales, USA社のSenior Vice PresidentのRobert Carter氏とFCVの「MIRAI」。
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 トヨタが特許の実施権を無償提供するのは、同社が長年研究してきたFCVの開発・生産の根幹となる虎の子の技術だ。特許の数は、燃料電池スタックが約1970件、高圧水素タンクは約290件、燃料電池システム制御は約3350件にも達する。他社がこうした特許を利用してFCVの製造・販売を行う場合は、市場導入初期(2020年末までを想定)の特許実施権を無償にする。水素ステーション関連の特許(約70件)の実施権は無期限で無償提供する。

 異例の決断の背景には何があるのか。トヨタはFCVでライバルを圧倒する競争力を持つ。2014年12月に世界に先駆けてFCVの量産車「MIRAI(ミライ)」を日本で発売。1台1億円以上とされたコストを、約724万円で販売できるまでに大幅に低減した。