本コラムを書き始めて約1年半が経過した。これまで、インドネシア、ベトナム、ブラジル、フィリピン、マレーシア、シンガポールと各国のものづくり現場をレポートしてきた。最終回となる今回は、これまで取り上げてきた各国の現場を踏まえて、グローバル経済におけるものづくりの今後について考えてみたい。
グローバル化への危機感
第3回(2014年3月号)と第4回(同年4月号)で紹介したインドネシアについては、筆者はその後も毎月のように訪問して現場を見続けている。先日、インドネシアで開催されたJETRO(日本貿易振興機構)主催のセミナーで講演する機会があった(図1)。参加者は現地の有力ものづくり企業の幹部が中心で、セミナーの目的は「グローバル経済下におけるインドネシアのものづくり企業のあり方」に関して、現地企業経営者のグローバル経済の認識度を高めることだった。
このセミナーが開催された背景には以下のような認識がある。インドネシアのものづくり産業は現在、自動車産業の進展により活性化しており、その活況なインドネシア市場に参入しようと周辺諸国のものづくり企業がインドネシアへの進出速度を速めている。インドネシア国内企業は、そうした外資企業に対抗する戦略、つまりグローバル経済への対応策を早急に練る必要がある。それを考えないと、せっかく日系企業が育てたインドネシア流のものづくり文化が崩壊してしまう危険性があるのだ。