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荷物の運搬や設備の点検・清掃、接客といった業務を支援する「サービスロボット」の導入が相次いでいる。使い勝手がよくコスト性能比の高い実用的なロボットが手に入るようになったからだ。少子高齢化による人手不足の解決策としての期待は大きい。搬送や点検・清掃の業務では既に導入が始まっており、接客業務に活用する検討も本格化している。これら具体的なロボットの事例から、サービスロボットに求められる機能や技術、必要条件を探る。

 物流や保守点検、銀行、ホテルなどのサービス業で活躍する「サービスロボット」が続々と登場している(図1)。荷物の搬送や設備の点検・清掃、接客などの業務を支援するロボットだ。3Dプリンターや高性能で安価な電子部品の普及によって低コストで開発・生産できるようになったことや、スマートフォンなどロボットのユーザーインターフェースとして使える機器が普及したことが利用の拡大を後押しし、ロボットの活躍の場が製造業からサービス業へと広がり始めた注1)。政府も2015年1月に「ロボット新戦略」を発表するなど、国を挙げて開発・普及に乗り出した。サービス業の現場で役立つのは、どんなサービスロボットか。最近実用化が始まったものや実用間近なロボットの事例から、サービスロボットに求められる機能や技術、必要条件を探る。

注1)  無線通信の普及とビッグデータ処理技術の進展により、ロボットとバックエンドのシステムの間で高度な連携ができるようになったことも背景にあるとみられる。

図1 日常生活に広がるサービスロボット
サービスロボットの導入が始まった業務分野と、導入による効果を示す。
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汎用性重視で地図作成方式を採用

 サービスロボットの中でも、産業用ロボットの技術を応用することでいち早く実用化が始まったのが搬送ロボットだ。日立製作所は2010年9月に「インテリジェントキャリー」、2014年9月には「Racrew(ラックル)」という無人搬送車を発売した注2)注3)。インテリジェントキャリーは日立グループの物流施設などで稼働している他、グループ外でも50台規模で導入された事例がある。ラックルは発売から間もないが、既にある物流業者への導入が決まっているという。

注2) インテリジェントキャリーとラックルは無人搬送車の安全基準に準拠しているなどの理由で、日立製作所では「ロボット」とは表現していない。

注3) インテリジェントキャリーは、2013年に日立製作所に吸収合併された日立プラントテクノロジーが開発、発売した。

 インテリジェントキャリーは、物流倉庫や工場など幅広い用途を想定した無人搬送車である。ベルトコンベヤーと連動する「コンベヤー型」や、人が荷物を積み降ろしする「積み込み型」、重量物を運ぶ「フォークリフト型」「牽引型」といった種類がある注4)

注4) コンベヤー型と積み込み型は最大30kg~4トン、フォークリフト型は最大1トン、牽引型は最大2トンの積載能力を備える。走行速度はコンベヤー型と積み込み型が最大7.2km/h、フォークリフト型と牽引型は3.6km/hである。

 インテリジェントキャリーの特徴は、環境地図の作成と自己位置推定の技術、いわゆる「SLAM(simultaneous localization andmapping)」による自律走行機能を備えることだ(図2(a))。従来の無人搬送車は目印(走行ガイド)を使用して自己位置を把握しながら走行していたため、短期間での導入や導入後のレイアウト変更が難しい。幅広い用途で使えるよう、どんな現場環境でも対応できることを目指してSLAMを導入した。

図2 汎用の地図作成方式と棚搬送に特化した走行ガイド方式を開発
日立製作所が開発した無人搬送車。地図作成方式を採用した搬送車は、コンベヤー型や積み込み型、フォークリフト型、牽引型といった用途に応じた種類を用意している。走行ガイド方式を採用した搬送車は専用棚の搬送に特化しており、小売り業者などの倉庫でのピッキング作業を自動化する用途を想定している(b)。(写真:日立製作所)
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