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 「数字で見る現場」のQ1で見たように、企業の多くは現在の工学部などの理系教育に大いに不満を抱いている。その不満とは何か。巷では、理工系離れや学力低下を嘆く声も聞かれるが、ものづくりの現場から聞こえてくる声は、それとはやや異なる。

頭でっかちは要らない

 考えて、試作・実験し、評価してまた考える──。失敗を重ねながら深く考えるこのサイクルが、より良い製品や次のイノベーションにつながる。しかし、今の若手技術者は「知識はあるし優秀だが、根本に立ち返って考えるのが苦手。蓄えた知識の中で応用問題を解くことはできても、イノベーションに必要な物事の根本をとことん考える力が弱い」(デンソー技術開発センター技術人材戦略室担当部長の手繰能彦氏)。

 「数字で見る現場」のQ2で理系教育に対する不満として、過半数が「問題や新しい仕事を自ら見つけ出し、解決する能力の育成が不十分」「実験・実習の経験が少ない」という回答を挙げているのは、今の新人は「頭でっかちで試作や実験に対する動きが鈍く、課題解決の姿勢に乏しい」との認識に他ならない。

 実際、「大学での研究も数値シミュレーションが多くなり、実験系を自分で組んだり、装置を使ったりした経験のない若手技術者が増えている。当社でもクルマのフロントフードを開けたことがない新人が実際にいる」(手繰氏)。実物に触れて考えるという機会の少なさが、課題解決に必要な考える習慣や挑戦する意欲の低下を招いているというのだ。

 しかし、現場が求めているのは、工学的基礎知識はもちろん、「数字で見る現場」のQ4で見たように、「自分で考える習慣の養成」や「課題解決力」である。つまり、自分で考えて積極的に課題解決に取り組むことのできる若手だ(図1)。

図1 欲しくない学生、欲しい学生
知識やコンピューターシミュレーションばかりで、実験・実習の経験が乏しいと、企業での開発における行動力や課題解決力が弱くなる。企業が求めているのは、自ら課題を抽出して、その解決策を生み出せる考える力と実行力を持った学生だ。(イラスト:服部幸平)
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