2014年5月に軍が戒厳令を発令し、以後、暫定政権が続いているタイ。クーデター前まで順調に成長していた自動車産業にも急ブレーキがかかった。現地の日系企業を訪ねて、タイ経済の現状と自動車産業の今後の見通しを聞いた。
バンコクの玄関口、スワンナプーム空港は欧米や中国からの観光客で賑わっていた。市内の繁華街は人通りが多く、渋滞も相変わらずだ(図1、別掲記事参照)。タイ経済はクーデター前の活況を取り戻したかに見える。
だが、実際には2014年のGDP成長率はわずか0.9%、新車販売も低調だ。政府の販売奨励制度「First Car Buyerプログラム」の効果で販売が大きく伸びた2012年は過去最高の143万台、余韻が残った2013年も132万台、そして2014年の各メーカーの当初見込みは115万台程度だった。ところがそこにクーデターによる景気の冷え込みが直撃した。2014年の国内販売台数は前年比33.7%減と大きく落ち込み、わずか88万2000台にとどまった(図2)。