PR

 時代は「分散」に向かっています。家庭や工場など至る所で電力が生まれる再生可能エネルギーの台頭しかり(記事)。ベンチャー企業による同時多発的な新事業創出の試みもしかり(記事)。そしてセンサーが散らばり、ロボットが動き回る世界では、情報の分散処理が主流になると今号のPerspective(記事)の筆者らは主張します。ネットワークのエッジ(端)で生じる膨大なデータは、クラウドに送るよりその場で処理した方が、伝送路の負荷軽減や制御の即時性の効果が高いというわけです。いずれは高い知性を備えた機械があまねく普及し、協調して働き出すというのが、記事が描く将来像です。

 機械によるデータの処理が多大な価値を生むであろうことは、筆者自身も最近痛感しています。2月号の誌面刷新以来、Innovator欄で紹介したインタビュー(記事)の未公開部分を含めた全文を本誌のWeb版に掲載するようにしました(http://nkbp.jp/NE1505089)。原稿を仕上げる際、録音から書き起こした会話の文面を眺めていると、現場では咀嚼しきれなかった細部に話者の意図が潜むことにしばしば気づきます。筆者の限られた情報処理能力では取りこぼしていたニュアンスや逸話が、過ぎ去る時間を記録に留める技術に救われているわけです。いつの日か自分より格段に頭が切れる機械が登場し、リアルタイムに話者の意を汲んで記事にまとめてもおかしくありません。

 ただし、複数の機械が協調して1つの仕事(タスク)をやり遂げるためには、相当高いハードルを超えねばならない気がします。機械がお手本とする人間でさえ、歯車が噛み合わないケースがよくあるからです。

 特集記事を書くというタスクを考えてみましょう。インタビュー記事とは異なり、時には相容れない多数の取材先の見解をまとめるのは結構な難事です。そこへ記事の査読者(デスク)の視点が入ると、たいてい意見が分かれます。記者とデスクの見方がぶつかる中から、締め切りに迫られて何とか着地点を見つける場合がほとんどです。

 問題を根本的に解決するには、あらかじめ関係者の心を1つにするしかありません。機械の場合はタスクの目的をどう記述して、姿形も能力も違う複数の機械にどう分配するのかが重要になりそうです。記事の場合、心をまとめる役割を果たすのはタイトル。いいタイトルから始まる記事は、すんなりまとまることが普通です。

 「出番だ、蓄エネ」「大学発世界企業」。今号の主張は読者の心に響いたでしょうか。