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高精度に大きな変位が計測可能

 こうして作り出した変位センサーの性能は高かった。まず、変位量に対する抵抗値の変化の度合いを示す指標であるゲージ率が、10程度となった。ゲージ率が2程度だった従来のひずみゲージ(銅・ニッケル系合金やニッケル・クロム合金など)を大きく上回る数字だ。さらに、従来のひずみゲージよりも、高い抵抗領域で変化するため、検知回路を組みやすい。

 金属合金でできた従来のひずみゲージよりも大きく伸びるので、指の曲げのような変位も捉えられる。変位量に対する抵抗値変化の線形性も高いため、補正回路もシンプルなもので済む(図3)。

図3 線形的な特性を持つ
往路と復路ともに変位と抵抗値には、線形関係がある。(図:ヤマハの資料を参考に本誌が作成)
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 センシングの追随速度については、現在29Hzまでを確認済み。「計測できる測定装置の限界が29Hzだったため、ここまでしか計測できていないが、さらに高速の動きに追随できると考えている」(鈴木氏)という。

 耐久性については、現時点において18万回の曲げ伸ばしで性能が劣化しなかったことが、確認できているとする。さらに現在、実験を継続中である。

外部との連携を歓迎

 実用化については未定で、現在有力な用途を探っている段階だ。「ヤマハにはない知見を持つ人たちとオープンに連携し、世の中に貢献できるような事業にしていきたい」(鈴木氏)とした。

 ヤマハの内部では(1)腕の筋肉の動きの検知、(2)呼吸の計測、(3)楽器演奏時の手の動きの計測、などの実験を行っている。

 (1)は、肘関節の曲がり具合と筋肉の周長測定を行うもの。これに無駄な筋肉を使っていないかを確認可能だ。

 (2)は胸囲によって変化するようにセンサーを付けるもの。呼吸周期が測定できる。

 (3)は手の指の関節や親指の付け根の部分を測定するグローブ型のセンサーを使って、指の送りを調べるもの。演奏評価や解析、演奏指導に使える可能性があるという。

 この他、スポーツやヘルスケア製品を手掛ける日本シグマックスと「ロコモティブシンドローム向けトレーニングバンド」を開発し、現在フィールドテストを実施中である。このバンドは、運動機能の低下が生じる「ロコモティブシンドローム」を検知するもの。足首のサポーターのような形状の製品で、日常生活で装着できる。足の甲と裏の動きを検知することで、運動動作の正確性を計測する。

 今後、開発した変位センサーの評価キットの発売も計画しているという。