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 三菱電機と立命館大学 理工学部 機械工学科 教授の木股雅章氏の研究室は、人や植物などの自然物と自動車や道路などの人工物を識別できる新構造の赤外線センサーを開発した。センサーチップの表面に特殊な微細加工を施すことで、光学フィルターを使わず、偏光の有無から人工物とそれ以外を判別する素子技術である。この素子をアレー化することで、低コストな人体検知用の車載センサーやガス分析センサーを実現できる。

 三菱電機と木股研究室が開発中の赤外線センサーでは、特定方向に偏光した光のみを選択的に吸収する「プラズモニック吸収体」を用いる。この吸収体はμmオーダーの周期的な凹凸を付けた金属膜である注1)。両者は、プラズモニック吸収体を楕円の孔で形成したデバイスを2014年までに開発していた。多数の楕円を長手方向がそろうように2次元的に配し、偏光波を選択的に吸収させる注2)。一般に人工物の反射光は偏光となり、生体など人工物以外の反射光は偏光とならない。この原理を使うことで人工物とそれ以外の区別が可能になる1)

注1)金属中の自由電子が集団的に振動するプラズマ振動(プラズモン)を制御する「プラズモニクス」の技術を応用したもの。金属表面に周期構造を形成することで、特定の波長・方向で表面プラズモンによる光の共鳴吸収が発生する。
注2)孔を真円にすることで、偏光検知機能は持たせず、特定波長のみを検知できるようにすることも可能。この場合はアルコール検知や火災検知などに使える。

 ただし実用化において、楕円の孔を持つ吸収体には課題があった。(1)μmオーダーの孔をばらつきなく正確な周期で形成するのが難しい、(2)偏光検知の対応波長域が孔の周期(孔と孔の間隔)と等しいので画素が大型になる、(2)人体検出以外にも用途を広げるには対応波長域の長波長化と広帯域化が必要、といった課題だ。