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画像認識にFPGAを使う

 ホンダセンシングで注目されるのは、カメラの画像処理にFPGAを採用したことである。欧州では、通常のCPU(Central Processing Unit)よりも高速処理が可能なFPGAをカメラの画像処理に使うのが一般的になっている。これに対して日本ではこれまで、画像処理の主な機能はASICが担い、FPGAはインターフェース機能を付加するなど補助的な目的で使われることが多かった。ホンダは先代のADASから画像処理にFPGAを採用していたが、搭載車種は限定的だった。今回、幅広い車種への搭載を予定するホンダセンシングにFPGAを継続して採用したことは、日本でもFPGAがADASの中核的な機能を担うようになってきたことを意味する。

 一方、これまでADASにASICを主に使ってきたトヨタ自動車は、次世代ADASでホンダとは異なる選択をするようだ。2014年9月13日付の日本経済新聞は、トヨタが東芝の車載向け画像処理半導体を2015年度から採用すると報じた。記事では東芝の半導体の名称に触れていないが、ADAS向けASSP「Visconti3」とみられる。東芝自身がトヨタ向けとは明言していないものの、2015年夏にVisconti3の量産を始めると語っているからだ。

 同紙の報道によると、東芝は車載半導体をまずデンソーに納め、デンソーがシステム化してトヨタに納入するという。トヨタは2015年度からCセグメント以上の車種向けに、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた新世代ADAS「Toyota Safety Sense P」を商品化する計画であり(図2)、Visconti3はこれに採用されるとみるのが自然である。

図2 トヨタの新世代ADAS「Toyota Safety Sense P」
ホンダセンシングと同様に、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせる。歩行者検知機能付き自動ブレーキなどの機能を搭載する。
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 Safety Sense Pは、「歩行者検知機能付き自動ブレーキ」「車線逸脱警報」「ハイビーム/ロービームの自動切り替え」「ACC」の機能をパッケージ化したもの。ASSPでは、日産自動車も単眼カメラを使ったADAS向けに、オランダMobileye社の画像処理半導体「EyeQ2」を採用している。

 こうしたADASの“先”をにらんだデバイスとして急速に台頭しているのがGPUである。GPUは画像処理専用に開発された半導体で、通常のCPUよりも高い画像処理能力を備える。

 GPU大手の米NVIDIA社は、2015年1月に開催された世界最大級のエレクトロニクス関連展示会「International CES 2015」で、同社のGPUを使った自動運転技術の開発プラットフォーム「DRIVE PX」を発表した(図3)。同社の最新GPU「Tegra X1」を2台搭載したボードで、12台のHDカメラ(60Hz)と接続でき、毎秒1.3ギガピクセルを処理する能力を備える。

図3 NVIDIA社の「DRIVE PX」
同社の最新GPU「Tegra X1」を二つ搭載した自動運転技術の開発プラットフォーム。
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 CES 2015のデモでは、DRIVE PXにディープラーニング(深層学習)の技術を実装し、クルマの陰に一部が隠れた歩行者など従来の画像認識技術では判別しにくい対象も認識できることを示した。NVIDIA社のGPUは、ドイツAudi社の次期「A8」に搭載される自動運転技術に使われるとみられる。