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 登場から苦節約7年。ソニー発の近接無線通信規格「TransferJet(トランスファージェット)」がついにスマートフォンに載る。採用を決めたのは富士通。同社がNTTドコモ向けに開発し、2015年5月下旬に発売する「ARROWS NX F-04G」に搭載した。同スマートフォンで撮影した4K動画などの大容量データを高速にやり取りすることを想定している。

2015年の富士通フォーラムに展示されたスマートフォン「ARROWS NX F-04G」。虹彩認証機能を備えた点が、最大の特徴である。高速に認証できることを売りにする。

 TransferJetはもともと、ソニーが開発した無線技術である。物理層での最大データ伝送速度は560Mビット/秒で,実効的なスループットでも最大375Mビット/秒を実現できるのが特徴である。通信距離は数cmと短い。一見するとデメリットのように見えるが、他の通信と干渉しにくいことや、機器同士をタッチして通信するので直感的な操作に向くことなどが利点になる。中心周波数は4.48GHz帯である。

無線LANの後塵に拝す

 ソニーが2008年1月の「2008 International CES」で一般に初公開した後、同年夏に仕様策定や普及促進などを行うTransferJetコンソーシアムが立ち上がった(関連記事)。コンソーシアムのメンバーには、大手電機メーカーやデジタルカメラメーカー、プリンターメーカーなどが名を連ねた。デジタルカメラで撮影した映像データをパソコンに移して視聴したり、プリンターに送信して印刷したりする用途などを主に想定していた。

「2008 International CES」で参考出展したTransferJet対応機器。ビデオカメラを専用受信機に置いて、データ伝送を実行している

 実際ソニーは、TransferJet通信機能を搭載したメモリースティックを2010年に開発・発売し、対応するデジタルカメラを開発(関連記事)。TransferJet対応メモリースティックを挿入することで、デジタルカメラをTransferJet対応に仕立てた。その接続相手として、TransferJet通信機能を搭載したノートパソコンや、USBで外付けできる通信ターミナルを発売した(関連記事)。これらの製品に搭載するTransferJet通信ICも、ソニーが開発した。

「2010 International CES」で見せた、TransferJet通信機能搭載のメモリースティック
「2010 International CES」で見せた、TransferJet通信機能搭載のメモリースティックに対応するデジタルカメラ
「2010 International CES」で見せた、TransferJet通信機能搭載のノートパソコン

 ところが、デジタルカメラメーカーやプリンターメーカーが選んだ無線通信手段は、TransferJetではなく無線LANだった。無線LAN通信機能を搭載したSDメモリーカードやデジタルカメラ、プリンターの製品が普及し始めたころから、TransferJet関連のソニーの活動は徐々に縮小していく。スマートフォンや“ガラケー”といった携帯電話機に採用されなかったことだけでなく、ソニー自体の業績が悪化したことも影響したようだ。