トヨタ自動車が革新的な生産技術を相次いで工場に導入している。2008年に起きたリーマン・ショックを機に、コスト削減や品質向上を目指して急ピッチで開発を進めてきた生産技術の数々だ。
ボディー溶接の工程を短縮するために開発したのが「レーザースクリューウェルディング(LSW:Laser Screw Welding)」である(図1)。田原工場や堤工場、元町工場、トヨタ自動車九州工場に導入し、「レクサスIS」から展開し始めたという。
現在、ボディー溶接はスポット溶接が主流だ。鋼板を電極で挟んで電流を流し、その際に生じる熱(抵抗熱)で鋼板を溶かして接合する。課題は、溶接速度が2.0~2.5秒/点と時間がかかることだ。この溶接時間を短くして工程を短縮するために、トヨタ自動車はレーザー溶接を採用した。
溶接速度は0.3~1.0秒/点と、スポット溶接の2倍以上速い。その理由は、溶接点から溶接点への移動が速いからだ。レーザー溶接は、レンズを使って集光した熱で鋼板を溶かして溶接する方法。レンズを制御することでレーザー光を次から次へと溶接したい点に素早く移動できるため、高速な溶接が可能になる。
通常のレーザー溶接には、鋼板の隙間に対して溶け落ちたり穴が開いたりするなど品質が不安定という課題があるが、同社はこれを克服した。ただし、技術の詳細は明かさない。
新しいレーザー溶接機は、スポット溶接機と同様に産業用ロボットのアームの先端に付けて使う。だが、ロボット1台当たりの溶接打点数が多いため、より少ない台数で対応できる。これにより、溶接工程の短縮を実現している。