「バラつきに対する見方が変わった」。こう語るのは、YKK工機技術本部新工場加工ライン最高責任者の清水毅氏だ。同社で使う製造装置や金型などを開発・生産する工機技術本部では今、「Target20」という活動を進めている。これは、開発した製造装置での加工費や消費電力、価格をそれぞれ20%低減しようというものだ。その一環として注力しているのが、バラつきを抑制するための取り組みである。
バラつきについては、従来は規格を満足しているかどうか、つまり「OK」か「NG」か、という考えが主流だった。しかし、実際の部品や製品ではOKの範囲内でもNGの範囲内でも値は異なってくる。それをきちんと把握し、判断することが品質の向上やコスト削減につながる。
こうした考え方を導入した背景には、この数年間での周辺環境の変化がある。その1つが、部品の外注比率が向上していること。付加価値の高い部品や高い品質保証が必要となる部品は内製するが、それ以外の部品は外部の協力工場などへ依頼することが増えてきた。その際、バラつきの存在を前提とすることで、依頼の仕方、受入検査の方法、指導の仕方が変わってくるのだ。
もちろん、バラつきへの対策は製造工程だけではない。設計段階での公差を検討する公差設計や設計と製造の間での情報伝達手段である3Dデータ、人材育成といったさまざまな取り組みが同社では進んでいる(図1)。