ドア閉じ性の事例では、ドア閉じエネルギーの平均値の改善にはヒンジ内傾角度が、バラつきの改善にはヒンジの摺動抵抗が、最も影響が大きい特性だと分かった(図5)。この結果に基づいて、ヒンジ内傾角度を調整し、摺動抵抗を削減するためにブシュの材料を黄銅からテフロンに変更するといった対策を施した。
技術構築フェーズの最後に実施するのが、量産工程での管理が必要な工程を特定するバラつき影響度解析だ。部品特性のバラつきが、車両性能にどのような影響を与えるのかを定量化する*6。基本的には品質工学の許容差設計の手順を踏襲するが、要因効果を寄与率に置き換えてパレート図*7にまとめる。
ドア閉じ性では、「メインシール面間寸法」*8の影響が大きいことが分かった(図6)。このように影響の大きい部品特性を量産工程での重要管理特性と定める。
以上の3ステップを通じて開発した技術は、「マスター性能計画」や「マスターQVCC」として蓄積される。マスター性能計画は、機能展開と設計感度解析、バラつき影響度解析の結果と対象性能の設計指針を整理したもの。マスターQVCCは、重要管理特性を設計中央値と公差の情報とともに記載したものだ。これらに基づいて、オンプロセスの設計フェーズでは具体的な寸法値などを決めていき、量産図面を作成していく。
1)大島恵,奈良敢也,「日産自動車における品質バラつき抑制手法QVCプロセス」,日科技連出版社,2014年1月.