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規制緩和で研究・開発が活発に

 人とロボットの協業については、ロボットメーカー各社がこぞってコンセプトモデルや対応製品を展示した(「柔軟かつ安全なロボットが登場」参照)。さらに、ユーザーであるドイツVolkswagen社も同様のテーマに関するデモンストレーションを実施し、生産ラインへの導入を検討していることを明らかにした(図2)。

図2 Volkswagen社のデモンストレーション
人とロボットの協業に関する研究・開発を進めている。ただし、実際の生産ラインへの導入時期などは未定である。
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 現状では、人とロボットが協業する場合、ロボットの稼働速度を安全なレベルにまで下げることが法律で求められているので、実際の生産ラインに導入可能な効率を実現するのは難しい。従って、ほとんどの生産ラインではロボットを安全柵で囲い、人と隔離している。それでは、造るものが目まぐるしく変わるマスカスタマイゼーションに対応しにくい。これを受けて、ドイツではこうした法律による規制を緩和しようという動きが進んでおり、人とロボットが至近距離で“対話”しながら互いの長所を生かせるような協業のあり方に関する研究・開発が活発になっているという

* 日本でも同じような規制緩和の動きがある。

 生産設備のモジュール化についても、生産ラインを柔軟にするという目的は同じである。「レゴブロック」のように自在に交換可能で、ネットワークに接続したら直ちに稼働する「プラグアンドプレイ」機能を備えた生産設備によって、マスカスタマイゼーションを実現するという発想だ。モジュール化には、さまざまなインターフェースの標準化が欠かせないこともあり、前出のZühlke氏が率いる業界横断的なプロジェクトや、産学連携の取り組みが目立っていた(「『レゴブロック』のように生産ラインを構築」参照)。

 Zühlke氏をはじめインダストリー4.0を推進する多くの人が、「ドイツと日本は置かれた状況が似ている」と語る。両国とも、国内では少子・高齢化などの社会的な課題を多数抱え、国外では新興国からの激しい追い上げを受ける立場だ。ドイツはインダストリー4.0で大量生産との決別を宣言し、マスカスタマイゼーションにかじを切った。日本はドイツと同じ道を行くのか、それとも独自の道を切り開くのか。決断を迫られている。