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 人とロボットの協業を実現する上で大きな問題となるのは、ロボットの設置場所を簡単に移せないことである。マスカスタマイゼーションでは、造るものに合わせて生産ラインの姿が目まぐるしく変わる。その変化に対して、人は柔軟に対応できるが、特定の場所に固定されたロボットは難しい。

 それならば、ロボットに“足”を与えて自ら動けるようにすればいい。ドイツKUKA社は、そんなコンセプトの試作品を展示した(図1)。具体的には、自律走行する台車に7軸垂直多関節ロボット「LBR iiwa」を搭載したものだ。

図1 KUKA社の試作品
自律走行する台車にロボットを搭載した。ワークをつかんで運ぶだけではなく、台車上での作業も可能である。
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 もともと、LBR iiwaは人との協業を前提に同社が開発した製品である。すべての軸にトルクセンサーを内蔵しているので、人や物体との接触を検知したら瞬時に退避できる。さらに、台車の4隅にもセンサーが付いており、移動中に人や物体と衝突しない仕組みになっている。ロボットの可搬質量は14kgである。

 ロボットと台車を組み合わせることによってロボットの用途は大幅に広がるとKUKA社は見ている。例えば、ロボットが同一のワークを保持したまま複数の場所で異なる作業をしたり、離れた場所で作業をしているロボット同士が近づいてワークを受け渡したりできるので、人とロボットが協業するシチュエーションも増えそうだ。造るものに合わせて生産ラインのレイアウトやプロセス、タクトタイムなどが頻繁に変わったとしても、自律的に移動するロボットであれば柔軟に対応できる。

 KUKA社によれば、工場だけではなく物流拠点などでも使えるという。今後は製品化に向けて現場での実証を進め、2015年末~2016年初頭の発売を目指す。