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快適で使いやすいユーザー・インタフェースや人を思わず夢中にさせる仕組みなど、ビデオ・ゲームの優れたノウハウを他分野に生かす取り組みが活発化している。本連載では、「ゲームニクス」などと呼ばれるこうした取り組みに注力してきた立命館大学のサイトウ・アキヒロ氏に、エレクトロニクス分野での活用法について解説してもらう。連載1回目となる今回は、任天堂のゲーム制作の姿勢を通じて、そのノウハウの優れた点を紹介する。 (本誌)

 「あっという間に数時間が経過していた」「説明書を読まなくても楽しめた」─。ビデオ・ゲームをプレーしたときに、こうした経験をしたことはないだろうか。ゲームは、「人を思わず夢中にさせる仕組み」や「快適で使いやすいユーザー・インタフェース(UI)」などを実現することに長けている。

 このノウハウを体系化した理論が、「ゲームニクス」である。「ゲームの構造(=ニクス)」という意味の造語である。20年以上、ゲーム・クリエーターとして活動している筆者の経験を基にまとめたものである。

 ゲームニクスを端的に言えば、人を夢中にさせるノウハウ集である。それは、「直感的で快適なUI」「マニュアル不要の操作理解」「はまる演出」「段階的な学習効果」「現実世界と仮想世界のリンク」の五つを実現するノウハウに大別できる(図1)。

図1 ゲーム制作に必須のノウハウ
図1 ゲーム制作に必須のノウハウ
ゲーム制作のノウハウを体系化した「ゲームニクス」には、利用者の意欲を持続させる目標設定の提示や自発的な学習効果を生む方法、現実世界と画面上の仮想世界の相互関係を効果的に利用する方法などが含まれている。
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 こうしたノウハウは、現在の家電業界が抱える課題を解決する有効な手段になる。これまで家電業界では、性能や機能といった“カタログ・スペック”に重きを置いた競争が頻繁に繰り広げられてきた。以前はそれらが製品の魅力に直結していたが、現在ではこの手法は通用しにくくなっている。スペック競争を加速させても他社と差異化できず、さらに複雑で使いにくい機器が増えてしまった。ゲーム制作のノウハウは、この状況を打破し、再び魅力のある製品を生み出すきっかけになる。