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 無意識のうちに行動していることって、よくありますよね?いえいえ、泥酔した揚げ句の醜態を言っているのではありません。その点に関して自分は弁明のしようもありませんが、ここで指摘したいのはもっと日常的な行為です。例えば今、私はまったく意識せずに呼吸しています。同僚と話しながらもドアを開け、会議室に入り、椅子を引いて腰を下ろし、怒られるまで無駄話に気づかないのも無意識のなせる技です。

 無意識。人の脳の奥に広がる、この広大な領域に今回の特集記事は光を当てます(記事)。センシング技術の発達によって、自分は意識せずとも働き続ける脳の活動を、事細かに観察できるようになってきました。そこに横たわるのは、思いもよらない製品につながるヒントの宝庫です。東芝の研究によれば、LEDの光を浴びると、脳の視覚野の一部が興奮する場合があるそうです。自然光との違いを体が感じ取って、無意識のうちに不自然さを解消しようとするためだとか。ストレスになり得るこの状態を生じさせないことで脳が疲れない製品を、同社は作ろうとしています。ストレス過多気味の自分の体に、ぜひ一度浴びせてみたいです。

 脳科学の有名な実験で、被験者が手を動かす際に、動かそうと意識するより早く、動きの準備をする脳の信号が観測されるという結果があります。脳がお膳立てを整えた後で、ようやく「動かそう」という思いが浮かぶというのです。だとすれば無意識の脳の活動こそ自分本来の意志や願望であって、意識はそれを後から解釈しているにすぎないのかもしれません。脳活動の計測は、自身も気づかない隠れた欲望や本性を暴き出す可能性があるのです。

 かくして「本当の自分」はデジタル化されネットに拡散し、いずれは機器やサービスを作る企業に利用される日が来るのでしょう。最近のWebサービスを使っていると、行動履歴だけでは私の正体にたどり着けないことは明白です。どこのサイトを見ても、現れる広告は日経エレクトロニクスの購読を勧めるものばかり。私が作り手側にいるとは知らないのです。それとも私の潜在意識が、自分で買い増してまで部数を増やすことを望んでいるとでもいうのでしょうか。

 本号にはタイトルに「脳」を冠した記事がもう1つあります(記事)。この記事によれば、半導体の電力効率をどんなに高めても、脳にはあと4桁足りないとのこと。このギャップを埋める逆転の発想とは何か。答えをご覧ください。