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東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授の藤本博志氏らの研究グループは、東洋電機製造や日本精工と共同でワイヤレス電力伝送を用いて駆動するインホイールモーターを世界で初めて開発し、電気自動車(EV)を走行させることに成功した(図1)。駆動配線をなくせるため、車両の耐久性・信頼性の向上が期待できる。

図1 試作した実験車両とワイヤレスインホイールモーター
実験車両は三菱自動車のEV「i-MiEV」をベースとしたもの(a)。ワイヤレスインホイールモーター(b)は、送電側と受電側のコイルの間で「磁界共鳴方式」により非接触で電力を伝送する。
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 車輪の内側にモーターを内蔵するインホイールモーターは、(1)4輪を独立に制御できるため車両の電力消費量を減らすことができ、車両の安定性や運動性能を向上できる、(2)デファレンシャルギアやドライブシャフトが不要なため車両の軽量化が可能で、車両のレイアウトの自由度が向上する、(3)独立したエンジンルームが不要になるため、車両のスペース効率が向上する─などのメリットがある。

 このうち電力消費量の低減については、例えば前輪と後輪で異なる特性のモーターを使うことで達成できることを、藤本氏らはこれまでの研究で見いだしている。

 前輪には、市街地走行時に効率が高くなるように、低速・大トルク発生時に効率の高いモーターを搭載する。一方、後輪には高速走行時に効率が高くなるように、高速・低トルク発生時に効率の高いモーターを使う。そして、走行条件に応じて前後の駆動力配分を変える。これにより消費エネルギーを8~9%を減らせるという。

 また、軽量化については、車輪とモーターを一体化することでドライブシャフトやデファレンシャルギアが不要になることにより、駆動系の質量を30~40%低減できるという試算もあるという。しかし従来、インホイールモーターには、モーターの個数が増えてコスト増加につながることのほかに、(1)ばね下質量が増大するため乗り心地が悪化する、(2)モーターに駆動電力を供給するための配線や、モーターの回転数を検出するセンサーなどの信号線が繰り返し屈曲を受けるため、耐久性・信頼性の面で不安がある─などの課題があった。

 このうち、乗り心地の問題に関しては、モーターの駆動力によって車体の振動を打ち消す技術を、藤本氏らはすでに開発している。ブレーキをかけると車体が前に傾いたり、急発進すると車体の前が浮いたりというように、制動力や駆動力の変化によって車体の姿勢を変えられることを利用して、路面の凹凸から車体に加わる振動を打ち消すような駆動力の変化を生じさせるものである。これにより、「インホイールモーターは乗り心地が悪化するという評価はかなり変わりつつある」(藤本氏)という。