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筒内ガス温度にピストンを追従

 さらにピストン頂面に新しく開発した「世界初」(トヨタ)の膜を設けたことも熱損失の低減に大きく寄与した。

 新開発の膜は、熱伝導率も比熱も小さいのが特徴。筒内のガスと直接接する表面は素早く熱くなったり冷めたりするが、膜の厚み方向には熱が伝わりにくい。このため、燃焼時に高温になった筒内ガスの熱がピストンを介して外部に放出されにくくなる。

 しかも比熱が小さいので燃焼時に膜に蓄積される熱量が少ない。その結果、排気行程後に筒内ガスの温度が低くなると、膜が蓄えていた熱が素早く放出され、ピストン頂面の温度も合わせて下がる。吸気・圧縮行程時の筒内の温度上昇を抑えられる。吸気時に筒内の温度が高くなると、空気が入りにくくなる上、NOx(窒素酸化物)が増えやすい。

 アルミニウム(Al)鋳造合金のピストン頂面を陽極酸化処理して、多孔質のアルミナ(Al2O3)膜を薄く作って実現する。アルミナ中にすき間が多くできて空気が入り、熱伝導率と比熱が低くなる。

 トヨタは新開発した膜を、「SiRPA(Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum)」と呼ぶ。陽極酸化処理で電解質溶液中にピストン頂面を浸し、金属を陽極(正極)にして通電することで、金属を酸化させてアルミナの膜を作る。酸化するときに金属イオンが溶解するため、アルミナには数十nmの小さなすき間ができる。また、ピストンのAl合金中に含まれるシリコンなどの周りには、数十μmと大きなすき間ができる。これらのすき間に空気が入り、前述したような特徴が出てくる。

 ただし、すき間が多くあると脆くなる。トヨタは、陽極酸化処理した膜のすき間にシリカを埋めることで膜の強度を高めた。具体的には、シリコンと窒素の結合を持つパーヒドロポリシラザンと呼ばれる物質を膜に塗布し、熱を加えてすき間にシリカを埋める。

 すき間にシリカを埋めると、熱伝導率と比熱が上がってしまうように思える。トヨタはパーヒドロポリシラザンの量などに工夫し、シリカで埋めるすき間は数十nmの小さな方だけにして、数十μmの大きなすき間にはシリカが入らないようにした。アルミナのすき間の大半は数十μmの大きな方だ。このため小さなすき間にシリカを埋めても熱伝導率と比熱に大きく影響しない。

 なお、膜を作るのは、ピストン頂面のスキッシュエリア付近から外側に限る。膜の表面は少し粗く、ピストン頂面の全面に作ると、筒内ガスの流速が低くなってしまうためである。将来はシリンダー内壁などに採用領域を広げたい考えだ。

 直噴インジェクターには、噴射圧を2500barと高くしたソレノイド式を採用した。高価な「ピエゾ式と同等の噴射特性」(トヨタ)を実現したとする。インジェクターでは燃料漏れを減らして可動部を軽くするなどして、小さくする工夫も凝らした。ターボ-チャージャーには、トヨタが内製した従来より小さなものを採用した。燃費性能と過渡応答性能を高めた。コンプレッサー翼は鍛造品を切削して造ることで強度を向上させている。