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組み込みソフトウエアの実装・テスト工程に変化が訪れている。試作ボードの代替になる「仮想プラットフォーム」を導入してソフトウエア開発の開始時期を前倒しにしたり、回帰テストや故障注入テストなどに適用したりする例が増えてきた。機能安全が求められる車載機器や、多数のボードを接続するIoT/ネットワーク機器などの開発に欠かせないツールとなりつつある。

 組み込みソフトウエアを搭載する機器の開発では、サンプルチップや試作・評価ボードの出来上がりを待って、デバイスドライバーやファームウエアの開発、OSのポーティングなどを開始することが多い。こうした試作ハードウエアが完成する前に、その動作を模擬する「仮想プラットフォーム注1)」というシミュレーターを導入して製品開発期間の短縮に挑む企業が増えている。

注1)仮想プロトタイプ、仮想マイコン、マイコンシミュレーター、プロセッサーエミュレーターなど、さまざまな呼び方がある。かつてはハードウエア・ソフトウエア協調検証ツール、コシミュレーションツールと呼ばれたこともあった。自動車業界では、仮想ECU(vECU)と呼ぶこともある。

 20年以上前から、こうしたコンセプトに基づくシミュレーション技術は存在するが、実際の製品開発への適用例が増えてきたのは、ここ7~8年のことだろう。当初は半導体メーカー、および画像処理用ASICを自社開発するデジタル家電やプリンター/複合機のメーカーが導入していた。SoC/ASICは、マルチコア化やバス構造の複雑化が進み、性能の見通しが悪くなっていた。そのため、アーキテクチャーの良しあしを事前に評価するために、仮想プラットフォームを利用していた注2)

注2)SoC/ASICの開発では、設計ミスによりチップ(半導体製造用フォトマスク)の作り直しが発生すると、数億円規模の損失になる。そのため、複雑なアーキテクチャーを採用したチップを新規に開発する際には、仮想プラットフォームによる事前検証が欠かせなくなっている。

 ここへきて、新たに仮想プラットフォームの導入に意欲を示しているのが自動車業界である。自動車メーカーや電装機器メーカーは、モデルベース開発手法の一貫として、仮想プラットフォームを利用したテストに取り組むケースが増えている。さらに、IoT/ネットワーク機器や産業用制御機器への適用例も増えてきた(図1)。

図1 仮想プラットフォームの利用目的
仮想プラットフォームは、まずSoC/ASICを開発するメーカーが採用した。2010年ころからは、自社でSoC/ASICを開発しない(標準ICを組み合わせてシステムを構築する)機器メーカーも利用するようになった。それぞれのユーザーの間で、適用目的に違いが見られる。最近は、回帰テストや故障注入テスト、複数ボード連携のシステム検証への適用に注目が集まっている。
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