軽オープンスポーツカーのホンダ「S660」とダイハツ工業の「コペン」。両車は造りの面でも特徴がある。鋼製中心の前車に対し、後者は樹脂外板を多用した。既存の工場でいかに設備投資を少なくして造るかを追及したS660と、着せ替えを前提に生産設備を作り変えたコペンのものづくりに迫る。

2015年7月号で車両コンセプトや開発の経緯を紹介したオープンスポーツカー2車は、生産の仕方も大きく異なる。鋼製ボディーのS660は、少量生産における設備投資の削減に重きをおいた。一方、樹脂外板を多用するコペンは、コストをかけて組立工程の一部と検査工程をショールームのように作り変え、それらをオーナーが見られるようにした。また、樹脂外板の着せ替えを実現するため、溶接や塗装ラインも刷新するなど積極的に投資している(表)。
S660の生産を担うのは、八千代工業の完成車工場である四日市製作所だ。現在、同製作所ではS660を含めて軽トラックなど5種類の軽自動車を混流生産している。
ホンダの工場と比較した場合の四日市製作所の特徴は、少量生産であることだ。タクトタイムは186. 2秒と、ホンダの工場と比べて3倍以上長い。生産台数は150台/日程度だ。2015年5月末時点で、S660は3台に1台の割合で組み立てラインを流れていた。事実、1日当たりの生産台数はわずか48台である。