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 「あれ」と思われた読者が、いらっしゃるかもしれません。本号では記事の並び順が通常の号と違うからです。いつもは後半の白黒ページに登場する「Perspective(論文)」は「Breakthrough(特集)」の一部として前半の誌面を飾り(記事)、普段は「Emerging Tech&Biz(解説)」の後に来る「Innovator(イノベーター)」が、複数の解説記事の途中に挟まれています(記事)。

 このうち論文が前にあるのは、そこに登場する技術が世の中に革新(Breakthrough)をもたらすと我々が判断した結果です。問題はイノベーターの方。なぜこんな中途半端な位置にあるのでしょうか。

 理由を説明するには雑誌づくりの実状に立ち入る必要があります。紙の雑誌では複数ページをまとめて印刷して製造効率を高めています。詳細は省きますが、この制約を満たしつつ無駄なコストを発生させないためには、あの場所に記事を載せる必要があったのです。

 デジタルデータとして記事を配信する本誌のWeb版では、こうした問題は一切生じません。他にもWeb版には、紙では白黒の記事をカラーで表示したり(Perspectiveは今号に限らずWeb版では常にカラーです)、紙よりも長い記事を載せたり、連載の過去の回を一覧できたりといったさまざまなメリットがあります。加えて本誌の読者であれば、どなたでもWeb版を購読できるのです。ところがWeb版の利用は、今のところそこまで多くありません。

 恐らくその一因は、読者の日常の情報収集活動にWeb版が組み込まれていないことにあるのでしょう。Web版を読むという行為自体が、無意識のうちに選択肢から排除されているのです。これを改善するには、Web版ならではの特徴を粘り強く訴え続けていくしかなさそうです。

 本号の特集で取り上げた新型不揮発性メモリーの前にも、恐らく「普段の活動に組み込まれていない」が故の壁が立ちはだかります(記事)。DRAMやNANDフラッシュメモリーを性能や消費電力で追い抜くだけでは不十分。機器の設計や製造、テストに至るあらゆる工程がDRAMやNANDフラッシュを前提にしているからです。だからこそ、新技術の普及が進むのは当分先と見積もりました。

 それでも、これらの技術に出番が来るのは確実でしょう。こうした手段を使わなければ進化が滞る時期がいずれは来るからです。雑誌が紙から脱皮して、デジタルに向かわざるを得ないのと同様に。