日本でも用途が広がる
数千万台の巨大市場とは程遠いが、日本でも3輪EVの需要はある。例えば、歴史のある街に多い狭い路地などでの集配業務や、ガソリンが高価な離島などの移動手段として、3輪EVが活躍する場面は多々ありそうだ。
3輪EVは、日本では「側車付二輪自動車」に分類される。運転には普通免許が必要だが、車検・車庫証明は要らない。ヘルメットを着用する義務もない。乗車定員や最大積載量の規定もない。
以下に紹介する2車種はいずれも国土交通省の型式認定を取得している。このため、横転しやすいという3輪車の欠点を技術で解決している。
光岡自動車の「Like-T3」は、電池を後ろのオーバーハングに積むことによって、安定性を向上させた。リチウムイオン電池を採用し、容量2.9kWhのモデルでは約40km走れる。2012年10月に発売してから3年が経とうとしているが、徐々に利用される場面が増えている状況である。
例えば兵庫県の有馬温泉にある旅館「御所坊」では、Like-T3をレンタカーサービスに使う。2015年6月にレンタカーの登録を済ませたばかりだ(図7)。有馬温泉地内は渓谷にあり、道幅も狭く坂道ばかりで、高齢者や子供連れでも楽しめるようにしたいという。
東京大学宇宙線研究所などの研究チームが岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡の地下トンネルに建設中の大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」でもLike-T3が使われている。狭いトンネル内を自由に走り回れて多くの荷物を運べる点が評価されている。全長7kmを超えるトンネルのため換気が大変で、排ガスが出ない点も重要だった。この他、京都では佐川急便が配達業務に、築地市場では魚の搬送車として、東京・青山の生花店では花の運搬に使われている。
開発を主導した光岡自動車会長の光岡進氏は「期待していたほど売れていないのが正直なところ。だが、活躍する場面が増えている。これからだ」と語る。