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 財団法人・福井県産業支援センター(http://www.fukui-iic.or.jp/fisc/)の研究員である安丸尚樹氏(福井工業高等専門学校機械工学科教授)および木内淳介氏(眼鏡フレーム部品などの表面処理加工を主な業務とするアイテック=本社福井県鯖江市から派遣)の2人と,京都大学エネルギー理工学研究所教授である宮崎健創氏らの共同研究チームは,パルス長がフェムト(10の-15乗)秒レベルである超短パルスの紫外線(UV)レーザー光を使った新しい極微細加工技術を開発した。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)や窒化チタン(TiN)の硬質薄膜に,波長が267nmの超短パルスUVレーザー光を照射し,その波長の1/10~1/5である数十nmレベルの極微細パターンを形成することに成功(図1,2)。レーザー光の波長および偏光状態を変化させることで,極微細パターンの形状およびサイズを制御することにも,世界で初めて成功した。

 この新技術は,MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)やNEMS(ナノエレクトロメカニカルシステム)向けの極微細加工や,パターンドメディア(極微細パターンに記録材料を配置して書き込み/読み取りの精度を高める記憶媒体)などへの応用が期待される。また,ナノスケールの極微細構造を持つエレクトロニクスデバイスや光デバイスを,インプリンティング(刻印)法で作製する場合のテンプレート(鋳型)として,この新技術で加工した硬質薄膜を利用することも考えられる。

 同研究チームは,加工が難しいとされるDLCやTiNなどの硬質薄膜の表面に,アブレーション閾値(それらの材質が蒸発し始めるエネルギー値)をわずかに超えた低フルーエンス(フルーエンスは1パルス当たりのエネルギー)のフェムト秒レーザー光を照射することで,レーザー光の波長の1/10~1/5と極微細なサイズの周期的構造を形成できることを発見。この極微細周期構造のパターンは,レーザーの偏光で直線状からドット状まで制御できることを実証した。直線偏光の場合は直線状に,円偏光の場合はドット状になる。

 さらに,紫外線のほか,波長800nmの可視光でも同様の加工を試み,周期構造のサイズがレーザー光の波長にほぼ比例して増減することも確認している。周期構造の高さ(深さ)は,パルス数に比例して増加し,300パルスで100nm程度になるという。

 今回の成果は,科学技術振興事業団(JST)と福井県が平成12年度(2000年度)に開始した福井県地域結集型共同研究事業(中核機関:福井県産業支援センター,事業総括:松浦正則氏=松浦機械製作所社長)によるもの。すでに,この技術に関する特許を2002年10月に出願済み。また,ドイツの科学論文誌“Applied Physics A”のVol. 76の2003年前半に発行される号に,今回の成果の内容について掲載される予定。(日経ナノテクノロジー 桜井敬三)

【図1】ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の表面を加工した例。レーザー光の波長は267nmで,直線偏光では間隔30nmの直線状(a),円偏光では直径25nmのドット状(b)の周期構造を形成
【図1】ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の表面を加工した例。レーザー光の波長は267nmで,直線偏光では間隔30nmの直線状(a),円偏光では直径25nmのドット状(b)の周期構造を形成

【図2】窒化チタン(TiN)薄膜の表面を加工した例。レーザー光の波長は267nmで,直線偏光では間隔40nmの直線状(a),円偏光では直径45nmのドット状(b)の周期構造を形成
【図2】窒化チタン(TiN)薄膜の表面を加工した例。レーザー光の波長は267nmで,直線偏光では間隔40nmの直線状(a),円偏光では直径45nmのドット状(b)の周期構造を形成