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 米North Carolina州立大学化学科教授のChris Gorman氏らは,学際的な研究チームを結成し,分子を用いてナノスケールトランジスタを作る研究を進めている。ナノスケールトランジスタは非常に小さいため,走査トンネル顕微鏡などでしか観察することができない。特徴は,「ボトムアップ」技術を積極的に活用しようとしていることである。「我々は,分子を組み立てていくことをテーマとしており,きちんと機能するトランジスタをできるだけ少数の分子で作ることを目指している。」と同氏は話す。

 学際的研究チームの主要メンバーは,Gorman氏,化学科准教授のDaniel L. Feldheim氏化学工学科教授のGregory N. Parsons氏である。Gorman氏のボトムアップアプローチとParsons氏のトップダウンエンジニアリングを融合させてナノスケールトランジスタの開発を進める。Parsons氏は微小なくぼみを持った分子基板の作製を目指し,一方でGorman氏とFeldheim氏の研究チームは,Parsons氏が作製する分子基板に分子「プラグ」を差し込む。その結果得られる構造が,電子スイッチ,すなわちトランジスタとして機能すると期待しているのである。

 新型トランジスタの開発を進める上で大きな課題は二つある。一つは,単一分子をどうやって組み立て,それをどうやって電子接点につなぐかという課題。もう一つは,トランジスタの基本的な動作特性である電流増幅を分子レベルでどうやって実現するかという課題である。

 Gorman氏が求めるもう一つの課題は,技術に明るい次の世代の学生の育成方法を根本的に変えること。「我々の研究グループでは学生たちに,伝統的な科学,工学,技術開発,最新の研究手法に関連のある学位を取るように奨励している。また,女性や少数民族の学生達にこの新しい学際的なパラダイムに参加する機会を広げたいと思っている。」と同氏は話す。さらに「技術変化のペースはますます加速しており,大学で学生たちに教えている法則の大部分が,彼らが卒業するまでに時代遅れとなってしまう可能性がある。従って我々は,(法則そのもの以外にも)どうやって考え,どのように問題を解決し,そして予期しなかったことや驚くべき新発見についてどのように研究を深めていくか,ということに焦点をあてなければならない。それはある意味,既存の学問領域の枠を越えるということでもある。」と同氏は付け加える。

 Gorman氏の次のような考え方を持っている。すなわち,「このような新技術は,最終的には企業の研究開発部門が仕上げるだろう。しかし基礎的な段階では連邦政府や州政府の支援を受けて大学が進めることになる。大学では様々な方法を試してみたり,将来有望な方面での関連研究を行ってみたり,また思いがけない発見をすることがある。確かに出発点を間違うこともあるだろうが」と同氏は語る。ちなみにGorman氏らの研究はナノスケール学際研究チーム(NIRT:Nanoscale Interdisciplinary Research Teams)を通じて全米科学財団(NSF)より資金援助を受けて進められている。