早稲田大学は2003年12月3日,当月に2回にわたり開催するナノテク研究のシンポジウムについて記者向けに説明会を行った。同大学は2001年に文部科学省科学研究費COE形成基礎研究費を受けて「分子ナノ工学」研究拠点を発足させて以降,ナノテク関連の研究プログラムを相次ぎスタートさせている。その研究成果と実用化が近いプロトタイプモデルなどをシンポジウムで発表する。

 同大が開催するのは10日,11日に開催する21COE「実践的ナノ化学」国際シンポジウムと,18日,19日開催するCOE分子ナノ工学拠点第3回公開シンポジウム「分子ナノ工学とバイオサイエンス・テクノロジーの接点」。いずれも早稲田大学の国際会議場で行う。

 「実践的ナノ化学」では2日間で13セッションの発表を行うほか,ポスター発表の形式で73の研究を展示する。同大のナノエレクトロニクス材料,精密プロセス,応用ナノ化学,ナノ合成化学,分子ナノ化学の5部門による研究発表で,有機ラジカルを使用した電池,リチウムイオン二次電池の負極材料としてのSn-Ni合金薄膜,超低エネルギーの放電を用いた水素製造および触媒反応プロセス---などは,「ナノテクの中でも実用化が近い研究成果」(同大実践的ナノ化学21COE研究所所長の竜田 邦明氏)という。

 後者のシンポジウムでは九州大学大学院・システム生命科学府の片山佳樹 教授や東京大学生産技術研究所の藤井輝夫 助教授などが招待講演を行うほか,早大のナノ物性制御グループ,ケミカルナノプロセスグループ,バイオマイクロシステムグループ,ナノ理工学基礎グループのそれぞれが研究発表を行う。このほか,プロトタイプ作製に関する研究として5テーマをポスター展示する。この中では「これまで大学のナノテク研究は産業化への関心が低かった。COEの研究では産業化を目指し,研究室でプロトタイプまでを作製することを目標とした。酸素富化膜マスクは実用化が近いし,マイクロ流体素子は2年後に商品化できる見込み」(ナノテクノロジー研究所所長の大泊 厳氏)という。

 なお,早稲田大学では12月中旬に研究特区「ナノ理工学研究機構(INN)」を設立する。ナノ理工学に関する大学における正式かつワンストップの機関であることを目標にした組織で,研究だけでなく,人材育成や提携,経営企画や起業などに取り組むという。この組織は期間5年の時限(外部評価により更新も可)を設けている。

 2002年に設立した「NTファウンドリ」や「NTフォーラム」,2003年に設置した大学院の「ナノ理工学」専攻などと合わせて,「ナノテクに力を入れていることを早稲田大学の特色にしていきたい」と同大研究推進部長の逢坂 哲彌氏はアピールした。(西村 勝彦)

21COE「実践的ナノ化学」国際シンポジウムへのリンク
COE分子ナノ工学拠点第3回公開シンポジウムへのリンク

研究推進部長の逢坂 哲彌氏(左)と実践的ナノ化学21COE研究所所長の竜田 邦明氏(右)
研究推進部長の逢坂 哲彌氏(左)と実践的ナノ化学21COE研究所所長の竜田 邦明氏(右)

ナノテクノロジー研究所所長の大泊 厳氏
ナノテクノロジー研究所所長の大泊 厳氏