京都大学 副学長(産学官連携・知財担当)の松重 和美氏(写真1)は2004年7月8日,京大が独自に外部から資金を調達して,それを通常の教育や研究に使うだけでなく,産学官(公)連携や大学発ベンチャー育成の仕組みをつくる“京大ファンド構想”(写真2)があることを明らかにした。近く学内の合意を得て2004年末までには実現する予定。「従来からの資金調達の経験と京大ブランドを活用し,大学発でイノベーションを創出する」(松重氏)。この資金を基にナノテク分野での大学発ベンチャー育成にも力を入れる予定だ。

 京大ファンドは,(1)主に卒業生や企業からのリスクを伴わない寄付で構成する「京大イノベーションファンド」,(2)投資家や企業からのリスクを伴う投資や出資で構成する「京大ベンチャーファンド」---から成る。京大イノベーションファンドは数十億円の規模を予定しており,独創性がある研究,知的財産の管理,人材育成などに支援をするほか,基盤/厚生施設や国際拠点などの建設や維持管理に充てる。

 京大ベンチャーファンドは,分野や領域を絞った複数のファンドを設け,それぞれのファンドごとに,起業段階に応じた出資,売却益,分配を見込む。最終的な事業化段階に達したら,ファンド自体が事業会社を設立し,その分配を受け取る。

 松重氏は,京都大学VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)施設長や知的財産企画室長も兼務している関係で,「VBLで実施しているプロジェクトのほとんどはナノテクノロジーに関係があり,京大ベンチャーファンドの中に,ナノテクファンドを設置することを考えている」(松重氏)としている。

 ベンチャーファンドの規模に関して松重氏は言及しなかったが,「京大が出願した特許のうちナノテク関連の割合は多く,特にIT分野や医工学連携の材料などに強い」(京都大学 知的財産企画室 産学連携研究員 八木 俊治氏,写真3)としており,「これらの特許を事業化するためのベンチャーファンドにリスク覚悟で投資する価値は十分ある」(松重氏)と売り込んでいる。

 京大の平成15年度の発明届出数は200件以上,そのうち特許として出願したのは約120件。平成16年度は4~6月で発明届出数が125件にも達した。京大ではこの資産を「今後出願済みで公開になっていない特許に関しても,2004年秋ごろから積極的に一部を開示してベンチャー立ち上げや産学官連携などのファンドに生かしていく」(八木氏)という戦略も練っている。(神保 進一)

【写真1】京都大学 副学長(産学官連携・知財担当)の松重 和美氏
【写真1】京都大学 副学長(産学官連携・知財担当)の松重 和美氏

【写真2】“京大ファンド構想”。出典:松重氏
【写真2】“京大ファンド構想”。出典:松重氏

【写真3】京都大学 知的財産企画室 産学連携研究員 八木 俊治氏
【写真3】京都大学 知的財産企画室 産学連携研究員 八木 俊治氏