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 2004年10月25日,東京大学 武田先端知ビル 武田ホールで第4回ナノテクノロジー分野における日米合同シンポジウム「ナノフォトニクス:ナノの光の粒で加工,デバイス,システムの限界を超える」が開催された。主催は,文部科学省と全米科学財団(NSF)で,これまでアメリカと日本と交互にシンポジウムを開催してきた経緯がある。

 はじめに,主催者である文部科学省の大臣官房審議官の小田 公彦氏,NSFのSenior Engineering AdviserのLawrence S.Goldberg氏が開会の挨拶。Goldberg氏は,このシンポウム開催の意義と,これまでのシンポジウムの経緯を報告した。当日,行われたシンポジウムは,あくまでも一般にオープンにされたもので,残りの2日間はクローズドされ,日米の若手の研究者がそれぞれ10名ほど参加して,最新の成果について発表,ディスカッションをする場となっている。

 シンポジウムでは,次の6 人の研究者による講演が行われた。東京大学教授の大津 元一氏(写真1),米California大学Los Angeles 校(UCLA :University of California,Los Angeles)教授のEli Yablonovitch氏,米Princeton 大学(Princeton University)教授の Stephen R.Forrest氏 (写真2),独立行政法人 科学技術振興機構研究員の八井 崇氏と川添 忠氏,独立行政法人 情報通信研究機構主任研究員の成瀬 誠氏。そして,山梨大学 大学院 教授の堀 裕和氏が,講演のクロージングを行った。

 ナノフォトニクス研究の第一人者である大津氏は,「ナノフォトニクスとは何か?」と題して講演。近接場光を使うナノフォトニクスの本質は「通常の伝搬光では実現不可能な新規機能と現実を実現すること」,つまり質的な変革をもたらすという。また,伝搬光には波長による回折限界があるが,近接場光は無縁なためにこれまでの限界を超えて,ナノスケールの加工や集積度の高いデバイスが可能であることを強調した。

 近接場光を加工の分野に採り入れたのは日本の企業だが,現在,限界の見えてきた光リソグラフィの次の加工技術として,近接場光によるフォトリソグラフィが視野に入ってきたところだ。大津氏は,この点についても興味深い報告を行った。

 紫外線を使う光リソグラフィは装置の大きさが2m角くらいであり,価格も約20億円 に達する。これに対して,近接場光のリソグラフィであれば,装置は半分以下の大き さですみ,価格に至っては1億円程度になるという。デバイス製造という観点からも, 近接場光を使うナノフォトニクスの可能性の大きさが伺い知れよう。

 次の講演者であるYablonovitch氏は,ナノフォトニクICの概念をはじめ,その微細構造は通常のシリコン・テクノロジーで可能であることを示し,課題となるのは「設計手法」であることを指摘した。また,Forrest氏も同様に,シリコンをベースとしたCMOSテクノロジーの成功に学んで, ナノフォトニクスを推進することを提示。Asymmetric Twin Waveguideという独特の構造によってナノフォトニクス・デバイスを開発できるという。しかも,これまでの.シリコン用装置を使えるだけでなく,設計はCADベースで十分であると,この技術の優位性をアピールした。

 八井氏は,ナノ微粒子を堆積させる近接場光CVD 法の開発,レーザーによる粒径の制御,パターンの自己組織化などについて詳細に報告。近接場光を発生させるファイバープローブを用いないで,一括で複数のナノ微粒子を形成させる大面積加工方の応用についても紹介した。

 川添氏は,近接場光をキャリアにしたナノフォトニック・スイッチを提案。具体的には,大きさの異なる3個の量子ドットを応用し,ON-OFFができる原理を示した。川添氏によると,小さな量子ドットから大きな量子ドットへエネルギーが流れるのは,小さな分子から大きな分子に光を集める光合成と同じで,バイオミメティックな技術であるという。

 最後の講演者である成瀬氏は,情報通信システムのトラフィックの増大が12カ月で2倍になるなど,急激な変化に対する新しいアーキテクチャの必要性を指摘。それらを支えるデバイスやシステムに,ナノフォトニクスによる微細化デバイスが課題を解決できる可能性が非常に高いことを報告した。

 これら6人の講演が終わった後,堀氏は「これから何をすべきか? 何ができるのか?」と題して,ナノフォトニクスを活用する意義,ナノメートル空間で行う制御手法,デザインの重要性などを紹介。今後,近接場光を活用するナノフォトニクスの基本的な課題をいかにして解決していくべきか,その重要性を問いかけてシンポジウムのクロージングとした。(佐藤 銀平)

【写真1】講演する東京大学 教授の大津 元一氏
【写真1】講演する東京大学 教授の大津 元一氏

【写真2】講演する米Princeton 大学教授のStephen R. Forrest氏
【写真2】講演する米Princeton 大学教授のStephen R. Forrest氏