北海道大学と物質・材料研究機構は,2004年12月7日,東京の新高輪プリンスホテルで包括提携の調印式を行った。契約書に調印をしたのは,北大 総長の中村 睦男氏(写真1左)と物材機構 理事長の岸 輝雄氏(同右)。

 基本協定の内容は,研究開発,人材交流,人材育成など相互の協力が可能な全ての分野において,具体的な協力を有機的に推進するというもの。まずは,物材機構 生体材料研究センター長で北大 教授の田中 順三氏を中心に生体材料に関して共同で研究開発を進める。「生体材料に続き,物質,材料,ナノテクノロジーへと範囲を広げたい」と岸氏は説明した。

 生体材料に関する当面の研究交流のテーマは,「バイオインスパイア技術を用いた生体組織再生材料の開発と医学応用実証」。「バイオインスパイア技術」とは,生物が持っている性質を人為的に触発し,目的に応じた機能を積極的に発現させること。生物の機能を真似る「バイオミメティクス」をさらに進歩させた形だという。具体的な例として,魚のウロコから目の角膜を再生させる「ウロコから目」や,カニの甲羅から神経細胞を再生させる技術を紹介した。ちなみに,魚のウロコと目の角膜はナノメートルスケールで非常に似通った構造になっているのだという。

 最初の契約期間は2006年3月末まで。その後は,特に問題が無い場合には自動延長するという。記者からは,「最近,包括提携がブームのようになっていますが,非常に曖昧な印象を受けます」という厳しい質問があったが,北大 副学長の長田 義仁氏は,「それは,これまでいくつかの包括提携を結んだ北大とは別のところのことをおっしゃっているのだと思います。北大の場合,ある程度目的を定めた提携を行います」と返した。

 今回の北大,物材研究機構間の提携で実施する研究テーマにおいても,必要に応じ,他の大学や企業などとの共同研究も有りうるという。例えば,田中氏は,「北海道大学にも医学部はありますが,角膜の研究に関しては慶応大学の医学部に世界的な権威がおり,そこに相談することも考えています」と言う。

 このほか,人材の育成にも力を入れる。例えば,物材機構にはジュニア研究員制度があり,1年間に約10人の大学院生を受け入れているが,包括提携によって,北大からの受け入れ人数は当然多くなるという。また,北大,物材機構それぞれにある機器類を,相互に利用しやすくするという。(黒川 卓)

【写真1】包括提携の調印式。左は北大 総長の中村 睦男氏で右は物材機構 理事長の岸 輝雄氏
【写真1】包括提携の調印式。左は北大 総長の中村 睦男氏で右は物材機構 理事長の岸 輝雄氏

【写真2】記者会見した代表者。右から,物材機構 生体材料研究センター長で北大 教授の田中 順三氏,物材機構 理事の加茂 睦和氏,物材機構 理事長の岸 輝雄氏,北大 総長の中村 睦男氏,北大副学長の長田 義仁氏
【写真2】記者会見した代表者。右から,物材機構 生体材料研究センター長で北大 教授の田中 順三氏,物材機構 理事の加茂 睦和氏,物材機構 理事長の岸 輝雄氏,北大 総長の中村 睦男氏,北大副学長の長田 義仁氏