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日亜化学工業 代表取締役社長の小川英治氏
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弁護士の長島安治氏
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 青色発光ダイオード(LED)に関連する特許への相当の対価をめぐり,2005年1月11日に中村修二氏と日亜化学工業が和解したことについて,日亜化学工業は同12日に徳島県阿南市にある同社の本社にて記者会見を開いた(関連記事1関連記事2関連記事3関連記事4)。この会見で日亜化学工業は,中村氏が日亜化学工業在籍時に発明した特許(特許第2628404号,以下404特許)に対する相当の対価について「日亜化学工業の言い分が完全に認められた」(同社弁護団の長島安治氏)ことを強調した。実質的には同社の勝利であることを主張するものである。

 今回の和解では,裁判で争われた404特許を含め,中村氏が関与した特許195件(実用新案を4件含む),特許出願中の技術112件,文書化していないノウハウすべてに対し,東京高等裁判所は相当の対価を6億857万円(遅延損害金を含まず)と算出した。404特許単独での算出はないものの,日亜化学工業は東京高等裁判所の算定式から404特許への相当の対価を1010万円と推測した。日亜化学工業による算出式は「売上金額2020億円×独占率0.1×実施料率0.01×中村氏の貢献度0.05」である(発表資料

 この金額は,一審判決の604億3006万円に比べてほぼ1/6000である。また日亜化学工業が東京高裁での控訴審において同特許の相当の対価として主張してきた「少なく見積もって42万円,中村氏に有利になるように計算しても1873万円」(長島氏)の範囲内にあったことから,日亜化学工業は東京高等裁判所が出した和解条件を高く評価する。中村氏が関与したすべての特許などに対する相当の対価が6億円程度になったことについて,日亜化学工業の代表取締役社長である小川英治氏は「納得はしていないが,404特許に対して相当の対価が1/6000に見積もられることについては満足」とした。

 日亜化学工業は控訴審において,404特許は青色LEDなどに使うGaN系結晶を形成するための手法にすぎないことや,青色LEDの製造において404特許の寄与度が低いことなどを強調し,東京高等裁判所に説明してきた。2004年12月14日に開いた東京高等裁判所に対する青色LEDの技術説明会において, 同社社長の小川氏は404特許などGaN系結晶を得る技術は「自動車の製造に例えると,鉄板を作る技術に相当する。鉄板だけで自動車が成り立たないように,青色LEDもさまざまな技術の集合体である」と主張したという。なお,この技術説明会の開催時期は,東京高等裁判所が和解を勧告した2004年12月24日のわずか10日前である。

 今回の和解に際し,日亜化学工業内には「和解に応ずるべきではない」という意見もあったという。和解勧告後に東京高等裁判所が同社側,中村氏側それぞれに示した「和解についての当裁判所の考え」において,同裁判所による相当の対価の算出式が記載されていたからだ。算出式は中村氏が絡む特許やノウハウなどすべてに対するもので,404特許のみに対する算出はなかったが,日亜化学工業にとっては今回のように同特許のみの対価金額を推測することができた。しかし,「これ以上,日亜化学工業の役員や有能な社員の力を裁判に費やすことは,市場における事業競争上のハンデキャップになる」(長島氏)と判断し,和解に応じたとする。なお,社内のリソースを係争にではなくLEDの研究開発などに注ぎ込むことが有効とした理由は,日亜化学工業が青色LEDなどに関連する係争について豊田合成などと和解した際にも挙げている。

 日亜化学工業は今回の記者会見において,現在生産する青色LEDなどに使っている中村氏が同社に在籍中に発明した特許の件数を明らかにした。「正確には見積もっていないが,多くても十数件」(同社 知財部 部長の芥川勝行氏)という。これらの特許は技術内容を分割してそれぞれ権利化したものであり,もともと4件~5件の特許に相当するとした。