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「ユビキタスビューア」を使い,携帯電話機からパソコンを遠隔操作できる。ここではグループウエア「ロータス ノーツ」を操作している
「ユビキタスビューア」を使い,携帯電話機からパソコンを遠隔操作できる。ここではグループウエア「ロータス ノーツ」を操作している
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 東芝は,携帯電話機からパソコンの画面を呼び出して遠隔操作することができるソフトウエア「ユビキタスビューア」を開発したと発表した。パソコンの画面データを圧縮して,第3世代携帯電話(3G)サービスのパケット通信で転送し,携帯電話機の画面による閲覧や操作を可能にした。

 2005年3月をメドに,主に法人ユーザーに向けたサービスとして商用化する。当初はKDDIと共同で,KDDIの3G端末に向けたASP型のサービスを用意する。NTTドコモの3G端末で動作する「iアプリ」に対応したソフトウエアも,2005年中に開発する計画である(発表資料)。

 ユビキタスビューアは,4つの部分から成る。第1に,携帯電話機にインストールするアプリケーション・ソフトウエアである。米QUALCOMM Inc.の「BREW」準拠の端末で動作する。第2に,操作対象とするWindowsパソコンにインストールするエージェント・ソフトウエアである。Windowsのバックグラウンドで,サービスとして動作する。第3に,KDDIといった通信事業者が運用するゲートウエイ・サーバで運用するソフトウエアで,ユーザー認証などを担う。残りの1つは,操作対象のパソコンを遠隔操作で起動/終了するサーバ・ソフトである。企業内のネットワークなど,操作対象のパソコンと同じセグメントで運用する。

画面データは独自方式で圧縮,容量は非圧縮時の3%に

 遠隔地にあるパソコンを手元のパソコンから操作するというソフトウエアは,既に複数のメーカーが商品化している。今回のソフトウエアの機能も,基本的にはパソコン相互間の遠隔操作ソフトと同等である。ただし,今回のソフトウエアでは携帯電話機向けならではの工夫がいくつかみられる。最大の工夫は,固定網に比べ帯域が狭く通信状態が安定しない携帯電話のネットワークでパソコンの画面を転送できるよう,画面データを大幅に圧縮したことである。

 画面データをできるだけ圧縮するため,東芝は独自開発のアルゴリズムを今回のソフトウエアに採用した。具体的には,最初に適応型算術符号により画面データを圧縮する。次に,パソコンの画面が主にウインドウなどの四角形の領域の組み合わせであることに着目し,1つの画面を複数の領域に分割する。個々の領域で使用されている色数を測定したり,表示内容がテキストかグラフィックスかを判別したりした上で,圧縮手法を個々に微調整する。

 同社によると,QVGAサイズの画面データの容量は,非圧縮時で約230Kバイト。適応型算術符号で圧縮すると元データの5%前後と一気に小さくなる。さらに同社のアルゴリズムを併用することで,3%程度まで容量を減らせるという。

 ここまでデータ圧縮にこだわったのには理由がある。KDDIの3Gサービスでは,月額料金の定額メニューを用意している。しかし「1日当たり6Mバイトを超えるデータを伝送した場合,超過部分には定額制が適用されなくなる」(東芝 ソフトウェア技術センター 技術開発第二担当主査の清水伸夫氏)。このほか,BREWの仕様上,データ伝送要求は1秒間に最大2回までとなっていること,KDDIの3Gのパケット通信速度はベスト・エフォート型であり,最高速度は2.4Mビット/秒だが実効速度では500kビット/秒程度に低下する場合があること,といった制約がある。携帯電話のネットワーク経由でパソコンを遠隔操作する上で,これらの制約をクリアする必要があったと東芝では説明している。

携帯電話機での使いづらさを緩和する工夫

 画面データの圧縮だけではない。ユーザー・インタフェースもパソコンと携帯電話機では大きく異なるので,その違いを吸収するための工夫もしている。例えばディスプレイの場合,携帯電話機だと画素数の大きな端末でもQVGA(320×240画素)サイズ。現在主流のパソコンとは比べものにならないほど小さい。パソコンの画面のほんの一部しか携帯電話機では表示できないので,さまざまな工夫が必要になる。マウス操作もパソコンのように簡単にはいかない。携帯電話機が備えている上下左右の方向ボタンと決定ボタンで代用するしかないので,なるべくスクロール操作などは減らしたい。こうした制約を緩和し,少しでもユーザーの使い勝手を向上するため,今回のソフトウエアでは次のような機能を実装した。

  1. 表示するアプリケーションの切り替え
  2. パソコンのエージェント・ソフトウエアが,そのパソコンで起動しているアプリケーションの名称とウインドウの位置を監視する。携帯電話機の画面ではアプリケーションを一覧表示できる。ユーザーが任意のアプリケーションを選択すると,画面の表示位置をそのアプリケーションのウインドウの位置へ自動的にジャンプさせる。

  3. 画面表示の切り替え
  4. パソコンの表示画面を拡大/縮小して携帯電話機に表示できる。横長表示の方が見やすい場合は,画面を90度回転して表示する。

  5. テキストの表示/編集に特化したテキスト・エディタ
  6. 通常の遠隔操作画面では,パソコンの画面デザインをそのまま携帯電話機で表示する。しかしワープロや電子メールなどのテキスト主体のソフトウエアの場合,携帯電話機の小さな画面では横方向に収まり切らない場合が多く,横スクロールの手間が増える。こうした手間を省くため,遠隔操作の対象となるパソコンのアプリケーションから,文字だけを抽出して携帯電話機のディスプレイに表示する。この場合の画面の横幅は携帯電話機のディスプレイに合わせており,ユーザーは長い文章を縦スクロールだけで閲覧,編集できる。

  7. パソコンの遠隔起動/終了
  8. 操作対象のパソコンとは別に,ユーザーが「PC起動サーバ」を用意し,これに専用のエージェント・ソフトウエアをインストールすることで,操作対象のパソコンを遠隔操作で起動/終了させることが可能になる。ただしPC起動サーバは常時オンにしておく必要がある。

東芝製以外の端末でも動作,ただし最新機種のみ

 2005年3月からの商用サービスでは,東芝とKDDIが共同でゲートウエイ・サーバを構築し,利用者から月額使用料を徴収するASP型の事業モデルを検討している。「料金は未定だが,ほかのBREWアプリケーションと比較して大幅に高くなることはない」(東芝 ソフトウェア技術センター 所長の青山光伸氏)とする。

 同サービスを利用可能な携帯電話機は「W21」シリーズ。東芝製以外の端末にも対応する。W21以前の端末では利用できない。これは,主に搭載するメモリ容量に起因する。「今回のソフトウエアは,端末でパソコンと同等のXGA(1024×768画素)の画面データを常時保持する仕様としている。携帯電話機で画面をスクロールした際に,その都度パソコンから画面データを転送しなくても済むようにするためだ。主記憶が3MバイトあるW21シリーズでないと,画面データ用のキャッシュを確保できない」(東芝の清水氏)ためである。

アプリケーションの一覧画面から,使いたいものを選択できる
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