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 米Cisco Sytems,Inc.と愛知県豊田市のケーブルテレビ会社であるひまわりネットワークは2005年2月23日,ケーブルテレビの放送網でデータ伝送速度1Gビット/秒の通信サービスを実現できる高速通信技術「Wideband protocol for DOCSIS」の運用試験を開始したと発表した(発表資料)。同試験は,トヨタ自動車およびトヨタホームが完成させた実験住宅「トヨタ夢の住宅PAPI」で実施し,「愛・地球博」の開催に合わせて3月25日から一般公開する。

 今回の高速通信技術は,ケーブルテレビ用に割り当てられた10MHz~770MHzの周波数チャネルの中で放送用に使っていない空き帯域を束ねて利用するもの。Cisco社が開発し,2004年12月からひまわりネットワークと実験環境で動作検証を続けていた。トヨタ夢の住宅PAPIでの運用試験は,ひまわりネットワークのケーブルテレビ放送用ネットワークを利用したフィールド試験となる。

 最大データ伝送速度は,束ねる空き帯域の広さによって変化する。日本や米国では6MHz幅を1チャネルとした単位を利用する。1チャネルは最大40Mビット/秒。25チャネルを束ねると1Gビット/秒となる。「放送用チャネルとの兼ね合いで,今回の運用試験では,使うチャネル数を抑えて,200Mビット/秒のデータ伝送速度で映像配信のデモンストレーションをする予定」(ひまわりインターネット)という。

既存のネットワークをそのまま使える

 ケーブルテレビ・インターネットで1Gビット/秒をうたう技術はほかにもある。しかし,放送用の周波数帯域より高い周波数帯を使うため,ネットワークの大幅な改修が必要だった。今回の技術は,多くのケーブルテレビ会社が利用している「HFC(hybrid fiber coaxial)」と呼ぶ,光ファイバと同軸ケーブルを組み合わせたタイプのネットワークのケーブル区間を改修せずにそのまま利用できる。ひまわりネットワークは「光ファイバを使うFTTH(fiber to the home)との競争の中で,ケーブルテレビ・インターネットも高速化が求められている。この技術なら,大幅なコストアップなしにFTTHを超える通信速度をユーザーに提供できる」と,Cisco社の技術を評価する。

 ケーブルテレビ・インターネットのプロトコルやモデムの仕様は,ケーブルテレビ局の業界団体,米Cable Television Laboratories, Inc.(CableLabs)が「DOCSIS(data over cable service interface specifications)」規格として策定している。今回のCisco社の技術は,DOCSISの次世代バージョン「DOCSIS 3.0」を狙ったものである。Cisco社のほか,米Broadcom Corp.なども同様な技術を開発中である。最新の標準仕様「DOCSIS 2.0」では,データ伝送速度は最大40Mビット/秒止まり。しかし,「次」は大変な高速仕様となりそうだ。