2004年第4四半期(10月~12月),NAND型フラッシュEEPROMの価格がビット単価で34%も下落した。その中でNAND型フラッシュEEPROMを製造する米SanDisk Corp.は収益が悪化するどころか,粗利益が過去最高となるなど,好業績を記録した。SanDisk社 President&CEOのEli Harari氏は「フラッシュEEPROMの低価格化に伴って需要が増加し,売上高が期待以上に伸びた」と好業績の理由を説明する(図2)。
これに対し,SanDisk社と同じウエハー枚数のNAND型フラッシュEEPROMを四日市工場から調達する東芝の業績は振るわない。同四半期に東芝の半導体事業の営業利益は,前年同期と比べて10分の1となった。家電業界の在庫調整による受注減のほか,NAND型フラッシュEEPROMの価格低下が収益を悪化させたという。
両社でこのような業績の差が生じたのは,両社が均等に配分するチップのうち,メモリ・カード・メーカーであるSanDisk社の方が高容量品の割り当てが多いためとみられる。高容量品は値下げ圧力を受けにくく,利益率が高い。これに対して東芝は,メモリ・カード向けチップのほかに,組み込み機器などに向け低容量品を多く調達している。このため,2004年に韓国Hynix社らの参入で低容量品市場に値下げ競争が起きたとき,影響をもろにかぶったとみられる。
ただしSanDisk社も「2004年第4四半期のようなペースの値下げが今後も続いたら,商売にならなくなる」(SanDisk社のHarari氏)という。同社は,今後5年はビット単価が40%~35%/年の割合で下落すると予測する。この予測の通りだと,例えばノート・パソコンの記憶装置に使える容量20GバイトのフラッシュEEPROMが,2009年には150米ドルで手に入る。その1年前の2008年ごろには,メモリ・カードの読み出し/書き込み速度が100Mバイト/秒を超えるという。これは現行のデスクトップ機向け3.5インチ型HDDとほぼ同等。パソコン用記憶装置としての役目を十分に果たしうる性能となる。