NECとNECエレクトロニクスは光伝送のサーバやルータなどでの使用を想定した,LSI間の超高速インタフェース技術を開発した。両社が開発したインタフェース技術のデータ伝送速度は12Gビット/秒と,PCI Expressの約5倍,次世代規格であるPCI Express Generation2と比べても約2.4倍と速い。減衰が大きい安価な伝送媒体でも実現可能という。NECエレクトロニクスは今回開発した技術を用いたIPコアを2006年上期にサンプル出荷する予定。ASICやASSPに向ける。
現在,高速データ伝送技術としてはPCI ExpressやSerial ATA,XAUIなどのように,シリアル伝送方式を採用したものが多い。今回NECとNECエレクトロニクスが開発した技術は「デュオバイナリ」と呼ばれる光伝送でよく使われる伝送方式を採用した。この伝送方式は,伝送路での減衰に起因する波形の歪み(符号間干渉)を完全に除去するのではなく,隣り合う信号間の波形歪みだけを許容してデータ伝送に必要な周波数帯域を2/3に圧縮する技術である。シリアル伝送方式のように符号間干渉を許さない2値伝送に比べて約1.5倍の高速化が可能とされている。NECはデュオバイナリ伝送方式を実装したバックプレーン・トランシーバLSIをISSCC 2005で発表している。90nm世代のCMOS技術で製造した。
NECとNECエレクトロニクスがデュオバイナリ伝送方式に注目したのは,10Gビット/秒を超える高速データ伝送の場合,シリアル伝送方式だとプリント配線基板の設計が難しくなると見ているためだ。信号振幅が減衰しやすく,高価な伝送媒体が必要になり,コストが高くなる。デュオバイナリ伝送方式であれば,一定量の波形歪みを許容できるため,シリアル伝送方式に比べて伝送媒体のコストを抑えられるという。
今回,デュオバイナリ伝送方式を使って12Gビット/秒のデータ伝送速度を実現するに当たり,NECとNECエレクトロニクスは2つの技術を開発した。1つは信号波形の制御に向けた新規のイコライズ技術である。データ伝送速度が高速になると波形歪みが大きくなるため,従来は1データ当たり1回だった信号波形の制御回数を,1データ当たり2回に増やした。もう1つはデュオバイナリ信号にクロックを多重化する新規符号化方式を用いたクロック抽出技術。高速のデュオバイナリ信号から最適なタイミングを抽出することに向けた。デュオバイナリ伝送は信号波形の歪みを使ってデータを伝送するため,データに制御信号を多重するのは難しかったという。