「量産となると,放熱対策のハードルがかなり高かった」(松下電工 照明事業本部 LED・特品・新市場開発センター 所長の下出澄夫氏)。松下電工は,照明機器用としては明るさが業界最高水準となる,白色発光ダイオード(LED)モジュールを開発した( Tech-On!関連記事,発表資料)。2005年3月1日から東京ビッグサイトで始まった展示会「ライティング・フェア」に合わせ,会場近くで製品発表会を開いた。白熱電球のような丸型,蛍光灯のような棒型,あたかも紙が光っているような面型など,モジュールの応用製品をずらりと並べ,同社の技術力をアピールした。ただし,今回の製品発表にこぎつけるまでに,同社は高出力白色LEDならではの課題の解決に苦労したという。
実は,今回のモジュールに採用した実装技術などは,2003年8月に発表済である。例えば,光の進行方向を妨げないように光源となる青色LEDチップをフリップチップ実装したこと,白色光のバラつきを抑制するために青色LEDチップと組み合わせる蛍光体材料をシート型にしたこと,放熱性を高めるためにCu基板やセラミックス・パッケージを採用したことなどは,当時の技術内容と同じである。ただし,一般に「LEDは白熱電球や蛍光灯に比べて長寿命」とされるイメージを製品で具現化するには,これらの工夫では実現するのが難しかったという。同社のモジュールに使う青色LEDチップは1個当たりに投入する電力が1W程度と高く,小型液晶パネルのバックライトに使う場合よりも1ケタ大きい。このため発光中のチップからの発熱量が大きく,この熱をうまくモジュール外に逃がせなかったので,封止材料が劣化して明るさが低下してしまったという。封止材料には短波長の光や熱に対してエポキシ樹脂よりも強いとされるシリコーン樹脂を使ってはいたものの,劣化が免れなかったとする。
熱がうまく逃げなかった
チップの熱をモジュール外にうまく取り出せなかったのは,セラミック・パッケージとCu基板との接合がうまくいかなかったからだという。松下電工の白色LEDモジュールは,セラミック・パッケージの中に青色LEDチップを収め,セラミック・パッケージをCu基板と接続する。チップの熱はセラミックス・パッケージを介してCu基板に至るようにしていた。同社は詳細を明かさないが,ある特殊材料を使ってセラミック・パッケージとCu基板を接続した。密着性が高まったほか,モジュールを大量生産しても,この密着性がモジュール間でバラつくことはほとんどなくなったとする。モジュールの明るさが半減するまでの寿命は4万時間を確保できた。
放熱対策が済んだとはいえ,現段階のモジュールでは投入電力25Wで得られる光束は250lm程度にとどまる。今後は,電源回路などを工夫して,明るさを高めていきたいとする。今回のモジュールは,投入電力のうち約20%がAC電源をDC電源に変換する過程で失われている。この部分を最適化すれば,電源での電力損失を5%程度まで減らせるという。