NTTとNTTエレクトロニクス(NEL)は,直接変調で2.5Gビット/秒,通信距離120kmを実現するDFB(分布帰還)型の半導体レーザ・モジュールを開発した(発表資料)。「温度制御回路を使わないタイプで120kmを実現したのは世界で初めて。従来は100kmが最長だった」(NTTフォトニクス研究所)。80kmまでの通信距離なら,−30℃~90℃で安定動作するという。2005年3月半ばにNELが発売する。
今回のレーザ・モジュールは,発振波長が約1.5μmのDFBレーザ素子を搭載する。同素子はNTTフォトニクス研究所が開発したもので,動作温度範囲が広いのが特徴。特に,−30℃という低温での動作を保証したのは同素子が初めてである。従来のレーザ素子の動作保証温度は,0℃以上がほとんどだった。2.5Gビット/秒といった高速通信用の通信機器は,ビルの中で利用するのが普通だったためである。
「今回は,屋外で使いたいという海外のユーザーの要望を受けて開発した」(NEL)。FTTH(fiber to the home)や都市部の中継ネットワークなどでの利用を想定する。日本以外でこうした用途が本格化しそうなのは,北米や韓国,中国など。これらの国では気温が−20℃前後になることも珍しくない。
同レーザ素子の開発は,レーザ・モジュールの低消費電力化にもつながった。同モジュールの消費電力は約0.2Wで,従来の波長1.5μmを使うレーザ・モジュールの1/5と小さい。これは消費電力が1W前後もあった冷却用の温度制御回路が不要になったためである。従来の1.5μmDFBレーザ素子は,温度が上昇するとロスが増えて光出力が急激に低下し,最後には発振しなくなってしまうという課題があった。これを防ぐために温度制御回路が不可欠だった。今回は「(レーザ発振の源となる)DFBの活性層の量子井戸構造を最適化するなど,結晶の構造を工夫することで温度が上昇しても出力が落ちないようにした」(NTTフォトニクス研究所)という。