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 公正取引委員会は2005年3月24日,携帯電話ユーザーに向けた音楽配信サービス「着うた」のコンテンツ提供に際し独占禁止法に違反する行為があったとして,エイベックスネットワークなどレコード会社5社に対し排除勧告を行った。勧告書によると5社は,各社またはそのグループ会社が原盤権を保有する立場を利用し,レーベルモバイル以外の着うた事業者のサービス展開を妨害した(PDF形式の勧告書全文)。これに対し,エイベックスネットワークの親会社であるエイベックス・グループ・ホールディングスは「公正取引委員会の事実関係の認識と当社の主張が大きく乖離している」として今回の勧告を応諾しないことを決めた(PDF形式のエイベックス・グループ・ホールディングスの発表資料)。

 勧告の対象となったのは他に,ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME),東芝イーエムアイ(東芝EMI),ビクターエンタテインメント,ユニバーサルミュージックである。5社は着うたのコンテンツ提供事業者「レーベルモバイル」を共同出資で運営。併せて各社の執行役員がレーベルモバイル役員を兼務するなどの形で,レーベルモバイルの運営に関与している。

 5社はレーベルモバイルに対し,各社が原盤権を持つ音楽について着うたサービスを展開するよう委託している。半面,レーベルモバイル以外の着うた事業者に対しては,原盤権の利用許諾を拒否している。これにより,各社が原盤権を持つ音楽については,レーベルモバイルがほぼ独占的に着うたコンテンツとして提供する状態となっている。なお,原盤権とはレコードや音楽CDなどの原盤制作者に対して認められている権利で,送信可能化権の担保となる。

「レコード会社優位の事業モデルを構築」

 着うたのサービスが始まる前に主流であった着信メロディーの配信サービスは,楽曲をMIDI形式などのファイルで記録したものである。音楽CDの音源をそのままサービスに使用する着うたと異なり,レコード会社の原盤権の影響を受けない。着信メロディー事業者は日本音楽著作権協会(JASRAC)に著作物使用料を支払いさえすれば,レコード会社に対し許諾や対価支払いをすることなくサービスを提供できた。結果として着信メロディー事業者が乱立し,着信メロディーのコンテンツ料金が下落することになった。こうした背景から5社は,着うたについてはレコード会社が優位性を発揮でき,コンテンツ料金の価格競争がない事業モデルとすることを目指し,5社の関連会社であるレーベルモバイルが独占的にコンテンツを提供できる事業手法を取ったと公正取引委員会はみている。

 公正取引委員会は,5社がレーベルモバイル以外の着うた事業者に対し原盤権の利用を認めないのは「正当な理由がないのに共同して拒絶している」と判断。著作権法第19条に規定されている「共同の取引拒絶」に該当し,不公正な取引に当たると認定した。その上で,レーベルモバイル以外の着うた事業者に対しても原盤権の利用を許諾すること,原盤権の利用許諾について今後は5社がそれぞれ自主的に判断することなどの排除措置を要求している。

 エイベックス・グループ・ホールディングスは「勧告内容は応諾しがたい。今後の審判手続きにおいて公正な事実認定と法律の適用を求める」として,既に拒否する方針を決めた。ビクターエンタテインメントは,「これまで公正取引委員会に協力を惜しまず対応してきたが,今回の勧告には思い当たるところがなく誠に遺憾。今後は内容を精査の上,慎重な対応を図っていく」としている。

 今回の勧告を受け5社は,2005年4月4日を期限にこの勧告を応諾するか否かを公正取引委員会へ回答する。各社が勧告を応諾しない場合,一般の裁判に相当する審判手続に移行する。公正取引委員会が今回指摘した行為の有無や,その是非を判断することになる。