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講演する横田哲平氏
 2005年4月11日,東京都内で開かれた「JEITAデジタル家電セミナー2005」の中で,メモリ・オーディオの音質に関する電子情報技術産業協会(JEITA)の規格「CPX-2601」について,JEITAオーディオネットワーク事業委員会副委員長の横田哲平氏(ソニー)が講演した。

 ハード・ディスク装置(HDD)やフラッシュEEPROMを搭載する携帯型音楽プレーヤでは,「1万曲を収録できる」など,メモリ容量に注目が集まりがちで,音質の良し悪しが二の次になる傾向があると横田氏は指摘する。1999年には日本レコード協会が「MP3などの圧縮音声について『CD並みの音質』といった表現を使うのはやめてもらいたい」との声明を発表するなど,音楽業界では携帯型音楽プレーヤの音質の客観的な評価・表示方法が求められていたという。JEITAはCPX-2601規格を2004年1月に策定したが,このところのメモリ・オーディオ市場の活発化を受けて,あらためて今回の講演の題材に選んだとしている。

 JEITAでは,携帯型音楽プレーヤの音質を「原音(CD)からの劣化度」で測ることにした。客観的なピーク測定法で,携帯型音楽プレーヤに取り込んだ音声ファイルをパソコンへ出力してWAVファイル化したものと,CDからパソコンへ取り込んだWAVファイルとを比べる。この結果,ビット・レートが高くなれば音質もこれに比例して高くなる(音質劣化が少なくなる)ことがわかった。JEITAではさらに,この客観評価の結果がユーザーの実感にどれだけ近いものかを確かめるため,人間の主観による5段階の音質評価もあわせて行った。

評価者のプライドを傷つけないテスト


 主観評価は,JEITAに加盟しているオーディオ・メーカー11社から約220名の協力者を得て行われた。「主観テストはともすれば聞き手の能力テストの様相を呈することがある。協力者のプライドが傷つくようなことになった場合,二度と協力が得られなくなる可能性があるので,回答は無記名とし,筆跡が出ないよう,線を引くだけで回答できる形式とした」と横田氏は主観評価実施の際に注意した点を語る。この主観評価の結果,客観評価と同様,ビット・レートが低くなれば音質劣化は著しいものとなることがわかった。

 興味深いのは客観方法に対する主観方法の誤差。劣化の少ない音に関しては誤差は少なく,誰もが高評価をする一方で,劣化した音については「聴くに堪えない」とする人や「少し気になる程度」とする人など評価にバラツキが出た。JEITAでは,音質劣化に関して「気になるが邪魔にならない」程度より上のものを音楽向けの音声として認め,それより下のものを記録用の音声とする評価基準をCPX-2601規格内で定めており,これによれば96kビット/秒音声と128kビット/秒音声の間で線が引けることになる。しかし,講演会場で流れた128kビット/秒音声と96kビット/秒音声の比較では,微妙な違いに首をひねる聴講者の姿も見受けられた。

 同規格は実際の製品の音質表示には現在のところ使われていないが,JEITAでは今後,使用を推進する計画。また,光ディスク系や小型HDD系,携帯電話系など他の機器の表示についての検討を進めるとしている。

客観評価で得られたビット・レートと音質の相関関係