2005年3月16日にオープンしたばかりの韓国初の国立ナノテクノロジー関連施設である国立ナノ総合ファブセンター(NNFC:National Nanofab Center) 所長で韓国科学技術院(KAIST) 教授の李 熙哲(Hee Chul Lee)氏が来日。仙台市民会館で開催されていたナノ学会 第3回大会で5月9日,「Current Status of Nanotechnology Development in Korea」と題して,韓国企業のナノテクノロジー関連研究への取り組み,ナノファブセンターの概要とこれからの活動計画について紹介した。

 李氏は,まず韓国国内の現状として,
1.ナノテクノロジー分野では世界を追いかける立場にあり,装置不足
2.熟練エンジニアの数が日本の約10分の1しかいない上,エンジニア職は不人気
3.人口が少ないため市場が小さく,経済成長が鈍化
4.IT・半導体産業に比較的強み
の4点を挙げた。

 次に,2001年に韓国政府が制定した「Comprehensive Nanotechnology Development Plan」を紹介した。14億米ドル(約1540億円。1ドル=110円で換算)以上の予算をR&D,人材育成,施設整備を中心に投資する計画で,領域はナノマテリアル,ナノエレクトロニクス,ナノバイオテクノロジーなど。他にも,ナノテクノロジーを推進するため,韓国政府は2002年にナノテクノロジー研究開発を推進する法案の制定し,国家を上げて強力にサポートしている。

 次に李氏は,韓国を代表する企業におけるナノテクノロジー関連の研究についても紹介した。Samsung Electronicsグループでは,
1.SET(単電子トランジスタ)メモリ,磁性体を用いたMRAM(不揮発性磁気抵抗メモリ)
2.フラッシュメモリデバイス
3.テラレベルのカーボンナノチューブデバイス
4.カーボンナノチューブを電子源に用いたFED(フィールド・エミッション・ディスプレイ)ディスプレイ(関連記事
などを開発していると言う。

 LG Electronicsグループでは,
1.SPM(走査プローブ顕微鏡)技術を用いたデータストレージ
2.ナノワイヤーグリッド偏光器用ナノインプリントリソグラフィー
3.フォトニック結晶デバイス
などの開発に取り組んでいると言う。

 最後に,李氏は所長を務めるナノファブセンターについて紹介した。韓国の中央部にある忠清南道テジョン(大田)市には,研究所が立ち並ぶ大徳(テドク)研究団地(Daeduk Science Town)がある。ナノファブセンターは,この地域にある韓国科学技術院(KAIST)内に設立された(関連記事)。予算は9年間で約2.9億ドル(約319億円)。そのうち42%は設備投資,38%は維持費だという。最大8インチまでのSi基板を扱い,次世代電子デバイスの事業化を目標とする。2フロアに及ぶ5067平方メートルのクリーンルームがあり,約50人,企業経験平均12.5年の熟練エンジニアが中心となっているという。アイデアの創出からサンプルの製作までのサービスを短時間に提供できるとしている。

 ナノファブセンターの基本的なサービスは,
1.クリーンルームのリース
2.ウェハ試験サービス
3.材料や装置の評価
4.装置やプロセスに関するR&Dサポートサービス
である。

 企業との産学連携も行い,国立の施設であるにも関わらず,日本はもちろんのこと,韓国以外の企業も歓迎すると言う。「研究施設としてはよいものができた。これから海外の研究機関と積極的に交流して技術や経験を学びたい」と李氏は述べていた。(近藤 一行)

【写真】国立ナノ総合ファブセンター 所長で韓国科学技術院(KAIST) 教授の李 熙哲(Hee Chul Lee)氏
【写真】国立ナノ総合ファブセンター 所長で韓国科学技術院(KAIST) 教授の李 熙哲(Hee Chul Lee)氏