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図1 製品時のイメージ。10mm×15mm×2mmのモジュール内に,2個の水晶素子などを搭載する。
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図2 RF回路のブロック図
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 水晶振動子メーカーの日本電波工業は,周波数が315MHz前後の微弱無線で,伝送距離が最大150mと長い無線通信システムを開発した。今後,現在の個別部品による回路をIC化して,高感度なアクティブ型無線タグとしての製品化を想定する(図1)。

 今回の無線システムの特徴は,1%のビット誤り率(BER)時で受信感度が−141dBmと微弱無線システムとしては非常に高い点。この結果,通信距離は「見通しがあれば100m~150m。一般的な微弱無線の10倍超届く」(日本電波工業 技術統括本部 千歳テクニカルセンター センター長の赤池和男氏)という。

 同社によれば,長い通信距離の一方で,消費電力は低く抑えられる見通しであるとする。具体的には,「消費電力はパイロット信号送受信時で,0.6mW(電圧+3V,電流0.2mA),データの送受信時で45mW(電圧+3V,電流15mA)」をICに集積した後の目標値として挙げた。これは,通信距離が10m程度の短距離無線通信規格のBluetoothの消費電力と同程度である。

高周波の水晶振動子を2個使って実現

 高い受信感度は,315MHzと高い発振周波数を持つ水晶振動子をQ値の高い帯域通過フィルタ(BPF)として採用し,さらに変調方式にバースト的な雑音に強い直接スペクトラム拡散(DSSS)無線を利用して受信回路の耐雑音性を高めることで実現した(図2)。「このBPFは通過帯域が40kHz~50kHzと,一般的なASK(amplitude shift keying)変調を使う微弱無線で使うSAWフィルタと比べて通過帯域が約1/10と狭い。D/Uで見た耐雑音性は40dB~50dBも向上する」(同氏)。

 BPFとしての水晶振動子は従来から「MCF(monolithic crystal filter:水晶フィルタ)」と呼ばれ,携帯電話機を含む様々な通信に使われている。ただし,150MHz以下の周波数での利用がほとんどだった。「315MHzという高周波でMCFを利用した例は今回が初めて」(同氏)という。この高周波は,基本波が105MHzの水晶振動子の3次オーバートーン(高調波)で実現する。

 高周波のMCFが必要となったのは,もう一つ高周波の水晶振動子を回路内で利用していることが理由になっている。今回の方式は,315MHzの水晶振動子をPLL回路の代わりに局所発振器(LO)として使うLow-IF方式を使う。具体的には,水晶振動子の高い周波数をわずか48kHz分だけずらして無線のキャリヤ周波数に利用する。「PLL回路を使わないことで,数mA分の消費電流を削減できた」(同氏)という。さらに,「同じ周波数,同じカット面の水晶振動子を2つ使うことで,温度変化による周波数の揺らぎにも上手く対応できる」(同氏)というメリットもあるとする。

 その他の特徴は,複数の無線タグで1つの周波数帯域を共有する方式として,CDMA(code division multiple access)を採用している点。「1万個のタグを扱うことも可能」(同社)とする。

 当初の応用先には,「キーレス・エントリー」と呼ぶ無線を使う車の鍵などを想定する。「一般の無線タグでは,カバーやアンテナの大きさなど実装時の制限で本来の通信距離が出ないという問題が起こっている。150mといった通信距離があれば,余裕のある実装ができる」(同社)という。価格は「量産時には,1個1000円前後で提供できる」(同社)とした。