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 NHK放送技術研究所は,自動車などの移動体における地上デジタル放送の受信に関して,より高速で受信できる手法を検討し,2005年6月24日に行われた映像メディア学会 放送技術研究会でその概要と,実験結果を発表した。室内実験の結果,時速200km程度で走行していてもUHF27チャンネルの放送を受信できることが明らかになった。従来,時速100km程度までは受信可能とされていた。

 一般に地上デジタル放送を移動受信する際は,周波数軸上と時間軸上に分散されて配置されているパイロット信号(Scattered Pilot)を使って,放送波が受信機に到達するまで伝送路の状況を推定し,ダイバーシチ合成のために重み係数を決める。このパイロット信号は周波数軸方向では12キャリアごとに1つ,時間軸方向では4シンボルごとに1つ配置されている(図)。

 これまでNHK放送技術研究所が開発した受信システムでは,同一時間に受信した12キャリアごとに1つあるパイロット信号に加えて,前後の時間に受信したパイロット信号を用いた直線内挿によるパイロット信号の補完処理によって得る基準信号も利用して伝送路推定を行っていた。つまり1つのシンボル期間内には擬似的なものも含めてパイロット信号が3キャリアごとに挿入されている状態になる。しかし,高速移動中はフェージングの時間変動が激しく,時間が前後するパイロット信号を内挿すると,かえって誤差が大きくなってしまっていることに着目した。

 そこで今回は1つのシンボル期間内にある,12キャリアごとにあるパイロット信号のみを用いて伝送路を推定する方式を採用した。そのため,周波数特性の推定精度は従来法に比べて低いが,推定による時間軸方向の誤差が含まれないため,高速移動時には全体としては伝送路推定の誤差を軽減できるとする。

 受信装置の試作品を用いて,伝送シミュレーション実験を行った結果,4個のアンテナを用いたダイバーシチ受信の場合,受信できるドップラー周波数は最大100Hzになったという。これはUHF27チャンネルを時速約200kmで受信することに相当する。ただし,所要C/Nが若干上がることと,等化が可能なマルチパス遅延時間が126μsから84μsに短くなる。また,野外実験では2個のダイバーシチ・アンテナを用いた場合に時速80km以上で今回の方式の方が従来の方式より優位であることを確認した。

図 あるシンボル期間に着目すると,パイロット信号は12キャリアごとにある。あるキャリアに着目すれば,4シンボル期間ごとにパイロット信号がある。
図 あるシンボル期間に着目すると,パイロット信号は12キャリアごとにある。あるキャリアに着目すれば,4シンボル期間ごとにパイロット信号がある。
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